巻き爪・陥入爪の治療について
どんな治療があるの?自分でできるの?
セルフケアのコツは?
手術治療は、主に爪の幅を狭くして陥入を改善することを目的とした方法(フェノール法・鬼塚法・児島法など)から、骨の形状を整え爪の形状を改善することを目的とした方法など様々な方法が、各学会で発表されています。
ぞれぞれ全ての方法を紹介する事は難しいですが、私が長年巻き爪治療を経験したなかで、代表的なもの、皆さんにお役に立てるものを紹介したいと思います。動画や写真を使って分かりやすく解説しています。
このページでは手術以外の保存治療(矯正治療を含む)について説明しています。
(手術治療についてはこちらページをご覧ください)
またわからない事は【相談掲示板】からお気軽にご相談下さい
【記事執筆】
埼玉医科大学 形成外科 医師 簗 由一郎
経歴・業績(自己紹介) と メディア出演歴
取材・出演依頼はこちら(メディアの方へ)
参考にして下さい。
巻き爪の保存治療について
(ワイヤー治療他)
ですので、その治療は原因となっている刺激を取り除くことであり、その方法によって様々な治療法があります。
※もちろん、患部の状況に応じて、抗生物質の内服や痛み止め、塗り薬による治療なども、
必要に応じて、同時に進めて行きます。
(1)爪の刺激から周囲軟部組織を保護・隔離して巻き爪を治療する方法
( )内にセルフケアができそうかを×△○◎で示しているので参考にして下さい。
別記事で施設の探し方をまとめていますのでこちらを参照ください
①テーピング法(セルフケア◎)
②コットンパッキング法(セルフケア◎)
③爪甲部分(爪棘)切除法(セルフケア〇)
④Gutter法(セルフケア×)
⑤アクリル人工爪法(セルフケア△)
(2)爪甲の彎曲(巻き爪)を矯正して治療する方法
市販品も多く販売されておりご自身でセルフケアできるもの多いです。
①弾性ワイヤー(セルフケア△)
②3TO-VHO(セルフケア×)
③爪甲先端に器具を装着する方法(ネイルエイド・Drショール セルフケア◎)
④プレートを用いる方法(マチプレート・B/Sブレイス セルフケア×)
⑤爪甲剥削法(セルフケア△)
⑥その他の市販品を用いる方法(セルフケア◎)
(1)爪の刺激から周囲軟部組織を保護・隔離して巻き爪を治療する方法
爪に直接的操作を加える爪甲部分(爪棘)切除法、周囲軟部組織に操作を加えるテーピング法、周囲軟部組織を爪から保護するコットンパッキング法、Gutter法などが代表的な治療法になります。
テーピングによる治療(セルフケア◎)
図1 テーピング法 a
らせん状にテーピングを巻きつけ陥入改善する
b テープの爪甲部をくり抜き3点に効果を及ぼしている
軽症の陥入爪であれば、テーピングにより痛みの改善が得られます。手技が簡単なのでぜひご自身でもおためし下さい。
コットンパッキングによる治療(セルフケア◎)
爪甲部分(爪棘)切除による治療治療
(セルフケア〇)
しかし爪が薄く変形が軽度な場合や、一時的な炎症による周囲皮膚の腫脹や肉芽形成が悪化の原因である場合など、爪甲(爪棘)の部分切除により炎症を改善することで再発なしに完治することもあるので、私は有用な方法と考えています。
変形が強い場合でも他の保存療法と併用することで再発なしに完治する場合もあります。局所の炎症や肉芽形成の改善や痛みの緩和効果も高いので効果的な方法であるとも言えます。
傷ができると感染のリスクもあります。セルフケアとしてはかなり難易度が高いかもしれません。(病院を受診しても不十分な切除で改善せずに私の外来を受診する方もいます。自分でしっかりやるのは少し難しいかなとも思います・・・・)。
刃先カーブになっている一般的な爪切りではなく、直刃のニッパー型の爪切りをを使うと切りやすいと思います。(図4)
- 爪切りの選び方はこちら
Gutter法(ガター法)による治療(セルフケア×)
図5 Gutter法の治療例
a両側の陥入爪 / bガター法施行 / c 2か月半後
方法
b-1 肉芽形成を伴う両側の陥入爪
b-2 チューブの外側から内側へ糸を通し、爪甲の爪床側から背側へ針を通したところ
b-3 再度、チューブの向い側で内側から外側へ糸を通す。2か所糸を通したところ
b-4 糸を結紮する
b-5 反対側も同様に施行
b-6 爪甲の辺縁がチューブで保護されている。
(アクリル)人工爪法による治療(セルフケア△)
以上、爪の刺激から周囲軟部組織を保護・隔離して巻き爪を治療する、代表的な方法を解説しました。テーピングやコットンパッキンは自宅でも簡単にできるので、ぜひ一度試してみてください。
(2)爪甲の彎曲(巻き爪)を
矯正して治療する方法
陥入爪の原因が爪甲変形(巻き爪など)に起因している場合、器具を用いて爪甲変形を矯正することで速やかな痛みの改善が得られます。一方、患者さんにより期間は様々ですが、爪甲変形を引き起こした環境の変化がなければいずれ爪は元に戻ることも多く、治療後も環境改善や再変形予防のケアが
重要になります。
爪を単純に薄くすることで形状変化を期待する方法や、矯正器具を使うものでは、爪に穴をあけ装着する弾性ワイヤー法、爪甲基部に装着可能な3TO-VHO®法、爪甲遠位端に簡便に装着可能なクリップ型矯正器具(ドクターショール®・ネイルエイド®)、爪の表面に矯正器具を貼り付ける治療(B/Sスパンゲ®・弾性プレート)などが代表的な治療法となります。
またその他にも市販品が各種販売されています。
代表的な矯正治療
①弾性ワイヤー(セルフケア△)
②3TO-VHO®(セルフケア×)
③爪甲先端に器具を装着する方法(ネイルエイド®・Drショール® セルフケア◎)
④プレートを用いる方法(マチプレート®・B/Sブレイス® セルフケア×)
⑤爪甲剥削法(セルフケア△)
⑥その他市販品を用いる方法(セルフケア◎)
弾性ワイヤー法(セルフケア△)
爪甲遠位端に装着するスペースがない場合は適応とならない点や、自分自身でやるには少し手技が煩雑な点がデメリットですが、昔からある方法でクリニックや病院で採用しているところは比較的多い治療法です。(ワイヤー治療を行っている施設の探し方)
図7 マチワイヤー®
a 0.25~0.6mmまで8種類の太さがある
b 強い弾性力により彎曲が直線状に復元する
方法
図9 弾性ワイヤー法の手順
1、2 爪甲に穴を開け、腹側からワイヤーを刺入する。
3、4 反対側も同様に穴を開け、背側からワイヤーを刺入する。この時皮膚を傷つけないよう留意する
5 ワイヤーの片側を爪甲内に収まるようにワイヤーの位置を調整する。
6 モスキート鉗子などで、片側のワイヤー位置を固定し、ワイヤーが爪甲彎曲に沿うようにしっかりと入れ込む
7 ワイヤー端をカットする
8 ワイヤーを装着したところ
図10 弾性ワイヤー挿入時の注意点
a 爪甲破損例
b ワイヤー端の露出
一般的に手に入る細い穴あけのドリルや千枚通しなどを利用すると、穴あけが容易となります。ネットを探すと、ワイヤーや穴あけドリルをセットで販売しているところもあるようです。
爪表面でワイヤーと爪の間に隙間がないように、爪に沿わせてワイヤーを装着すると、矯正効果が高まります。隙間ができてしまう場合には、穴を少し大きめにすると、刺入部でワイヤーが斜めになり収まりが良くなります。
爪甲が破損する事もあるので、爪甲が脆弱な場合、ワイヤーの太さの選択を慎重に行う必要があります。
3TO-VHO®法(セルフケア×)
加工したワイヤーを左右の爪甲側縁に装着し中央で巻き上げることで爪甲を矯正する方法です。爪甲基部から中央部に装着するため、爪が十分に伸びてない症例や爪甲基部での変形が強い症例などに有用です。手技が煩雑で施術にはライセンス取得が必要なので、扱っている医療機関が少なく、また矯正費用が高額になるのがデメリットですが、装着後3ヶ月程度交換が不要であり患者さんの通院負担が少ない点はメリットです。
同じような仕組み(フック上のワイヤーを爪甲側縁に装着する)のワイヤーが複数種類ありますが基本原理は同じです。(3TO-VHO治療を行っている施設の探し方)
図11 3TO-VHO®
a 治療前 爪甲基部から遠位端までの弯曲を認める
b 治療後1ヶ月 装着部の弯曲改善を認める
c 3TO-VHOの機序 巻き上げ用ワイヤーにより中央部が引き寄せられ、それに伴い爪甲側縁が挙上される
方法
図12 3TO-VHOの手順
a 加工して爪甲側縁にかけるワイヤーと、巻き上用のワイヤーに分かれている
b ワイヤー端を爪甲の大きさに合わせカットする
c 爪甲に引っ掛ける部分を加工作成する
d フック状に加工した部分を爪甲側縁に引っ掛ける
e 加工したワイヤーと巻き上げ用のワイヤー
f 爪甲側縁にワイヤーをかけたところ
g 巻き上げワイヤーを利用し爪甲側縁を持ち上げる
h 巻き上げが終了したところ
i 余分なワイヤーをカットしたところ。この後ワイヤー断端を人工爪等で保護する
以下医療従事者向けのアドバイスになりますが、事前に爪甲剥削法を行うなどの工夫が効果的です。ワイヤーを加工する際、爪甲に引っ掛けるためにフック状にする部位以外は、カーブをつけずに直線状にした状態で巻き上げた方が、爪甲側縁の挙上効果が高いと考えます。
クリップ型巻き爪矯正器具
(ネイルエイド®、ドクターショール®)(セルフケア◎)
代表的な器具としては、ネイルエイド®とドクターショール®があります。先に販売されたドクターショール®はCu-Al-Mn合金性のクリップ型の爪矯正器具です。
図13 Drショール®
クリップ状の形態で爪を挟み込み使用する
後に開発されたネイルエイド®は、ドクターショール®の欠点を克服し、強い矯正力で厚い爪や変形が強い爪にも装着可能で、靴を履いても邪魔にならないのが特徴です。
図14 クリップ型矯正器具ネイル・エイド®
a 治療前
b ネイル・エイド®を装着
c 治療開始 約1ヶ月
d ネイル・エイド® 背側に2箇所と腹側に3箇所の鈎状弯曲構造
プレートを用いる方法(セルフケア△)
矯正力や固定性に不安があり、医療機関での使用報告は少ないです。主に巻き爪治療院などの非医療機関で繰り返し装着することで少しずつ改善させる場合が多いように思います。
ワイヤーやクリップ型矯正に比較して矯正効果は弱いですが簡便に装着可能であり、薄い爪に装着して痛みを取り除く効果を期待したり、費用がかかりますが、繰り返し装着をして長期間での改善を目指すのであれば有用だと思います。
採用施設などで施行してもらうことをお勧めします。
爪甲剥削法(セルフケア△)
図15 爪甲剥削術
a 高度な陥入爪に対して爪甲剥削術施行
b 施行直後:爪の彎曲が改善している
爪白癬(爪水虫)などが併発している場合、抗真菌外用薬の浸透性を高める効果も期待できます。
図16 爪白癬に対する部分剥削法
A 治療前:爪白癬による爪甲白濁を認める
B グラインダーを用いて、爪甲部分剥削法を施行。
C 処置後9ヶ月 処置後外用薬で加療、爪白癬の改善を認める
図17
aフットケア用グラインダー(湿式)
b一般工具用ルーター
まとめ
・爪の刺激から周囲軟部組織を保護・隔離して巻き爪を治療する方法
・爪甲の彎曲(巻き爪)を矯正して治療する方法
それぞれ様々な方法がありますが、セルフケアが可能なものも多くあります。このページを参考にご自身でも試してみてください。巻き爪の治療には正しい知識が重要になります。このサイト全体をご覧いただくと、爪の解剖、自分で出来るセルフケアから手術まで、巻き爪の予防から治療までを詳しく解説しています。ぜひしっかり学んで、正しい巻き爪の知識を身につけましょう。またわからない事はこちらでお気軽にご相談下さい。