巻き爪の基本(巻き爪と陥入爪の違いなど)

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巻き爪って何?

巻き爪を放置するとどうなる?
「巻き爪」と「陥入爪」、何が違うの?

ホームページをご覧頂きありがとうございます。このサイトでは、巻き爪・陥入爪について、皆さんと一緒に学んでいこうと思います。治療法や予防法・セルフケア・矯正器具などについては、それぞれのページで詳しく解説しています。

しかし、その前に、まずは巻き爪について、簡単な爪の解剖から、その言葉の定義まで基本を学びたいと思います。ご自身が巻き爪の方、ご家族や介護・看護されている方が巻き爪の方など皆さんの参考になればと思います。

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【記事執筆】
埼玉医科大学 形成外科 医師 簗 由一郎

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爪の役割と解剖

巻き爪について学ぶ前に、正常な爪について学びましょう。
爪の解剖、爪の生え方、爪の役割、について簡単に解説します。

爪の構造・解剖

一般の方に、あまり詳しい爪の構造の知識は必要がないかもしれませんが、巻き爪の病態を理解することは、巻き爪の予防やセルフケアにも役立つと思います。
簡単に説明します。

いわゆる皆さんが爪と呼んでいるのは「爪甲(そうこう)」です。爪甲は爪の母と書く「爪母(そうぼ)」で作られます。そして、爪のベッドであり、爪と骨の橋渡し役でもある「爪床(そうしょう)」に沿って伸びていきます。

爪下皮(そうかひ)」の部分まで伸びると、「爪甲遊離縁(そうこうゆうりえん)」となり爪が皮膚から離れる状態になります。

爪甲の根元に三日月状に白く見えるのが「爪半月(つめはんげつ)」、そこに接する薄い皮膚、いわゆる甘皮と呼ばれている部分は「爪上皮(つめじょうひ)」です。爪母で作られたばかりの爪甲を保護する役割があります。

爪甲側面の皮膚の部分を「側爪郭(そくそうかく)」と呼びます。

平田昌子ほか:爪の解剖と病理.MB Derma. 111:6-11.2006 より引用

爪の構造・解剖​
爪の構造・解剖​
専門医のワンポイントコメント
巻き爪になると爪甲が彎曲し、側爪郭の部分で皮膚が食い込み痛みなどの症状がでると、陥入爪とになります。また、巻き爪の手術は、爪甲両端の一部を切除し、爪母を切除、もしくは薬で処理をすることで、幅の狭い爪甲にすることを目的にしています。
専門医のワンポイントコメント
爪半月が見える見えないは、人によって、また指によっても違います。大きく見える人もいれば、見えない人もいます。まったく見えなくても心配ないです。

爪の性質と生え方

爪はタンパク質の一種のケラチンで出来ています。表皮の成分と毛の成分の両方の性質を持つと言われています。爪の根元にある爪母で作られ、爪床と密着した状態を保ちながら爪床に沿って遠位側に伸びていきます。

爪の伸び方は個人差が大きいので、一概には言えませんが成人の手の爪は1日に約0.1mm、1か月に約3mm程度伸び、足の爪は手の爪よりも伸びが遅く、1日に約0.05mm、1か月1.5mm程度伸びると言われています。

手の指は半年~1年、足の指は1年~2年で全体が生え変わります。足の爪は手の爪よりも伸びる速さが遅いため、爪を傷つけたり、病気になったりすると、健康な爪に変わるまで時間がかかります。

また爪の成長速度は年齢によって違いがあます。生下時より徐々に早くなり、11~30歳でその速度がピークとなり、以降は爪の成長が遅くなっていきます。

子育てをされた事がある方は、赤ちゃんや幼少期のお子様の爪の伸びはそこまで早くはないと感じた方もいるかもしれません。
50才を過ぎる頃には、子供の頃の伸びより遅くなると言われています。

赤ちゃんの爪と高齢者の爪は伸びが遅い

専門医のワンポイントコメント
爪の伸び方は体の成長と似ている部分もあります。10代で成長速度のピークを迎え少しずつ速度が遅くなります。体調や全身の栄養状態で爪の状態は変化するので、健康のバロメーターとも呼ばれています。

爪の役割

爪には2つの大きな役割があります。

1つ目は、指先を保護する役割です。外的な衝撃から保護するだけでなく、細菌やカビなどから感染を予防する役割を果たしています。

2つ目は、指先の力を受け止める役割です。指先に力を入れた時、爪があるおかげでしっかりと力を受け止める事ができます。

手の指では爪があることで、ものを掴んだり、細かい作業をするときの微妙な力加減を調整することができるようになります。

足の指では、爪があることで、足指が地面をしっかりと捉え、踏み込む力を強くする役割があります。
ものを掴む
地面を捉える
専門医のワンポイントコメント
死んだあとも爪が伸びるという話を聞いたことはありませんか?実はこれはまったくの誤解です。死後の人体は水分が抜けて皮膚が縮む事で、爪が伸びているように見える事からそのように言われているのかもしれません。

巻き爪とは

巻き爪トラブルは早めに対応を

正常な爪の次は、本題の巻き爪について学びましょう。

巻き爪とは、爪の端が内側に巻き込んでいる状態のことをいいます。

多くは足の親指に起こりますが、親指以外や手の指が巻き爪になることもあります。
巻き爪になりやすい爪や、なりやすい環境がありますが、誰にでもなる可能性があります。

巻き爪の痛みをかばい、腰や膝を痛める事もある

巻き爪を放置すると、爪が皮膚に食い込み、痛みや炎症が起こる事があります。痛みを放置すると、無意識にかばい歩きをすることで、膝や腰を痛めてしまうなどのトラブルにつながる事があります。

また痛みにより指をしっかり踏みしめることができずに、さらに巻き爪が進行するとこになってしまいます。(踏みしめることができないと、なぜ巻き爪が進行するかはこちらの記事を参照)

さらに進行すると、爪が食い込んだ部分に肉芽が形成され、ばい菌(細菌)により傷が化膿し、ひどい場合は指全体が炎症を起こす場合もあります。

そのため、巻き爪になったら、特に痛みがある場合は、早めの対応が必要です。私の外来でも軽めの巻き爪であれば、セルフケアや靴の選択や履き方、歩き方などの日常生活の指導で改善することも多いです。

巻き爪の治療

セルフケア、保存治療、手術治療

巻き爪の治療は、個々の患者さんの状態に合わせて、セルフケア、保存治療、手術治療、そして予防を組み合わせ行います。
セルフケアは、観察や保湿などの、[予防のためのセルフケア]やコットンパッキンやテーピングなどのより積極的な、[治療のためのセルフケア]など様々ありますが、いずれも継続して行うことが大事です。

保存治療は巻き爪を矯正する治療が中心になります。市販品で自分で出来る 器具やグッズ、病院で施術してもらう矯正など、いろいろな治療法が各施設で行われています。

矯正治療は原則健康保険が適応されないという点に注意が必要です。
手術治療にも様々ありますが、爪の幅を狭くすることを目的としている場合が多いです。

両端の爪の幅を狭くすることで、爪が食い込んでいた部分の爪自体がなくなることで、痛みが改善します。

近年は術後の疼痛が少ないフェノール法という方法が多くの施設で実施されています。

巻き爪治療の費用

先ほども少し触れましたが、巻き爪に治療には、治療費が健康保険適応となるものと、健康保険が適応されない自費治療のものがあります。

診察や、抗生物質などの内服薬・軟膏などの外用薬の処方、また、爪切りなどの簡単の処置から手術などは健康保険が適応され、患者さんの年齢や保険の種類などに応じて最大でも治療費の3割負担で治療することができます。
一方、巻き爪の矯正治療は原則保険が適応されませんので、自費治療になります。治療費は各施設でさまざまですが、治療の内容に応じて数千円~1万数千円程度かかることが多いです。詳しい費用は治療前に各施設で確認する必要があります。
専門医のワンポイントコメント
矯正治療が保険適応であれば、まずは矯正治療をやってみて、ダメなら手術をしましょうと気軽に提案できるのですが、自費の矯正治療を何度もやって最終的に手術になってしまうと患者さんに申し訳なく思ってしまいます。

なので矯正治療をする場合でも、保険適応となる手術についても説明するようにしています。

巻き爪・陥入爪:ことばの定義

ところで、みなさんは「陥入爪」という言葉を聞いたことがありますか?

これは「かんにゅうそう」と読みます。巻き爪と陥入爪、一般的には「巻き爪」が使われることが多いです。

ただ、「巻き爪」という病名(病気の名前)はありませんので、医療の世界では「陥入爪」が使われる場合が多いです。
日本形成外科学会
似ているようで厳密には意味が違います。医療の世界では以下のように定義されることが多いです。

・陥入爪=「爪甲が側爪郭に陥入し炎症を引き起こした状態」
・巻き爪=「爪甲が彎曲した状態」


ちょっと難しい医療用語がありますが簡単に言うと

陥入爪は「爪が皮膚に対して悪さをして、皮膚が炎症をおこしている状態」という意味で巻き爪は「単純に爪が巻いている状態」という意味です。

ちなみに日本形成外科学会のHPでは「陥入爪」の疾患について以下のように解説されています。

「陥入爪とは、爪の端が周りの皮膚に食い込んでしまうことで、痛みや腫れが生じたり、さらに傷ができたり膿んでしまったりしている状態のことです。

一般的に巻き爪と表現されることが多いのですが、必ずしも爪は巻いていません。
原因は深爪や合わない靴の着用とされており、足の親指に起こることが多いです。」
正常な爪・陥入爪・巻き爪
炎症を起こした足趾の陥入爪
炎症を起こした足趾の陥入爪

巻き爪・陥入爪:治療の違い

一応言葉の定義はありますが、実際の臨床現場でその違いをあまり意識することはありません。

症状のまったくない巻き爪は別として、診察上明らかな陥入はないが、少しでも痛みなどの症状がある巻き爪は、圧迫を含めた爪甲による何らかの影響が生じていると考えられるので、私は陥入爪(炎症はないが痛みがある)と考えて治療の対象にしています。

また、巻き爪とは爪の彎曲した状態を示しますが、変形の程度は必ずしも痛みなどの症状と比例しません。かなり巻いているのにまったく痛みがない患者さん、変形は軽度でも強い痛みを訴える患者さんなど症状は様々です。

もちろん陥入爪では、炎症により肉芽が形成され化膿している事も多いです。そういった場合は抗生物質の内服や、肉芽に対する治療、場合によっては手術が必要です。
症例1:巻き付いてるけど痛くない(巻き爪だが陥入爪ではない)
症例1:巻き付いてるけど痛くない
(巻き爪だが陥入爪ではない)
症例1は巻き爪をワイヤーで治療した
症例1は巻き爪をワイヤーで治療した
症例2:巻いてはいないが爪が食い込んでいる(巻き爪ではないが陥入爪)
症例2:巻いてはいないが爪が食い込んでいる
(巻き爪ではないが陥入爪)
症例2は食い込んでいる部分を手術で治療した
症例2は食い込んでいる部分を手術で治療した

巻き爪・陥入爪:大事なこと

そう考えると、治療においては陥入爪・巻き爪の定義に必ずしも固執する必要はないといえます。(患者さんの症状はしっかり確認する必要があります)

大切なのは、個人個人の症状に応じ適切な治療法を選択することです。ワイヤーなどの器具を利用した矯正治療は、多くの陥入爪症例にその適応があり有用であるのは間違いないです。患者さんにとっても痛みや侵襲のある手術をしないで痛みが緩和されるので大変喜ばれます。

一方、繰り返し施行された保存療法で長期間治癒しなかった患者さんが、手術により短期間で治癒するとも多く経験しています。患者さん個々の状態に合わせた治療をするのが重要です。
専門医のワンポイントコメント
矯正治療が保険適応であれば、まずは矯正治療をやってみて、ダメなら手術をしましょうと気軽に提案できるのですが、自費の矯正治療を何度もやって最終的に手術になってしまうと患者さに申し訳なく思ってしまいます。

なので矯正治療をする場合でも、保険適応となる手術についても説明するようにしています。

最後に

このページはで、正常な爪の事、また巻き爪や陥入爪の基本的な事について学びました。

このサイトでは、自分で出来るセルフケアから手術まで巻き爪の予防や治療を詳しく解説しています。ぜひしっかり学んで、正しい巻き爪の知識を身につけましょう。

またわからない事はお気軽にご相談下さい