巻き爪の保存治療(セルフケア・矯正など)

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巻き爪・陥入爪の治療について

どんな治療があるの?自分でできるの?
セルフケアのコツは?

このページでは巻き爪の治療について学びたいと思います。巻き爪・陥入爪の治療は、簡単なセルフケア、ワイヤーなどの器具を用いた矯正治療から各種外科的治療(手術)まで多岐にわたります。矯正治療は巻き爪を自分で治すことができる市販の各種グッズから、医療機関やネイルサロン等で施術が必要なものまで各種商品が販売されています。

手術治療は、主に爪の幅を狭くして陥入を改善することを目的とした方法(フェノール法・鬼塚法・児島法など)から、骨の形状を整え爪の形状を改善することを目的とした方法など様々な方法が、各学会で発表されています。

ぞれぞれ全ての方法を紹介する事は難しいですが、私が長年巻き爪治療を経験したなかで、代表的なもの、皆さんにお役に立てるものを紹介したいと思います。動画や写真を使って分かりやすく解説しています。

このページでは手術以外の保存治療(矯正治療を含む)について説明しています。
(手術治療についてはこちらページをご覧ください)

またわからない事は【相談掲示板】からお気軽にご相談下さい

【記事執筆】
埼玉医科大学 形成外科 医師 簗 由一郎

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巻き爪の保存治療について
(ワイヤー治療他)

このページでは手術以外の巻き爪の治療(医療用語的には保存治療と呼びます)について学びたいと思います。
陥入爪(巻き爪)の痛みは、爪が爪周囲の軟部組織(爪のまわりの皮膚など)に対して刺激を与えている事が原因で引き起こされます。この刺激により皮膚が傷つき、痛みや、炎症・肉芽・化膿の原因となります。

ですので、その治療は原因となっている刺激を取り除くことであり、その方法によって様々な治療法があります。

刺激を取り除く方法により以下に大別できます。方法によっては、セルフケアとしてご自分で治療可能なものもあります。ご自身でのセルフケアが可能かどうか、セルフケアするのであればコツや何に注意したら良いかも含めて学んでいければと思います。

※もちろん、患部の状況に応じて、抗生物質の内服や痛み止め、塗り薬による治療なども、
必要に応じて、同時に進めて行きます。
(1)爪の刺激から周囲軟部組織を保護・隔離して巻き爪を治療する方法
まずはじめに紹介する方法は、爪の形を矯正するのではなく、皮膚に食い込んでいる爪を取り除いたり、カバーしブロックすることで、痛みを改善する方法です。代表的な方法は以下となります。

(  )内にセルフケアができそうかを×△○◎で示しているので参考にして下さい。
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ご自身でなく医療機関などの施設で巻き爪の治療をしてもらいたい場合は
別記事で施設の探し方をまとめていますのでこちらを参照ください

①テーピング法(セルフケア◎)
②コットンパッキング法(セルフケア◎)
③爪甲部分(爪棘)切除法(セルフケア〇)
④Gutter法(セルフケア×)
⑤アクリル人工爪法(セルフケア△)

(2)爪甲の彎曲(巻き爪)を矯正して治療する方法
次に紹介する方法は、爪の形を矯正することで、食い込んでいる爪を、皮膚から引き離し、刺激を取り除く方法です。矯正の仕組みで様々な方法があります。

市販品も多く販売されておりご自身でセルフケアできるもの多いです。

①弾性ワイヤー(セルフケア△)
②3TO-VHO(セルフケア×)
③爪甲先端に器具を装着する方法(ネイルエイド・Drショール セルフケア◎)
④プレートを用いる方法(マチプレート・B/Sブレイス セルフケア×)
⑤爪甲剥削法(セルフケア△)
⑥その他の市販品を用いる方法(セルフケア◎)

それぞれの治療法について、概要を解説します。

(1)爪の刺激から周囲軟部組織を保護・隔離して巻き爪を治療する方法

陥入爪の根本的な原因は、爪の皮膚に対する刺激なので、それを取り除くことで陥入爪を治癒させる方法です。

爪に直接的操作を加える爪甲部分(爪棘)切除法、周囲軟部組織に操作を加えるテーピング法、周囲軟部組織を爪から保護するコットンパッキング法Gutter法などが代表的な治療法になります。

テーピングによる治療(セルフケア◎)

テーピングによる治療
テーピングによる治療

図1 テーピング法 a
らせん状にテーピングを巻きつけ陥入改善する
b テープの爪甲部をくり抜き3点に効果を及ぼしている

爪周囲の皮膚軟部組織をテープで牽引し、爪との接触を軽減させる方法です。図のようにらせん状にテープを巻きつける方法が臨床で広く応用されています。両側や趾先に痛みがある場合、大きめのテープを一部くり抜き、趾先全体を覆う方法も効果的です。

軽症の陥入爪であれば、テーピングにより痛みの改善が得られます。手技が簡単なのでぜひご自身でもおためし下さい。
専門医のワンポイントコメント
緊張を持ってテープは張り付けるのでテープがずれやすいですが、少しずらしてテープを2重・3重と重ね貼りすることで効果が持続します。肉芽組織がある場合、それを圧迫するようにテープを重ねることで肉芽消退効果も期待できます。血行障害を起こさないために、趾の全周性にテープを巻かないように注意してください。

コットンパッキングによる治療(セルフケア◎)

コットンパッキングによる治療
図2 コットン・パッキング法
爪が陥入している部分の爪下にコットンを挿入し、爪と皮膚の接触を遮り、痛みを緩和する方法です。昔からある治療法です。外れやすいという難点を克服するためにコの字状に挿入し医療用瞬間接着剤で固定する方法などもあります。陥入が軽度の場合、ご自身で施行可能であるという利点もありますが、外れやすく頻回の通院が必要となることも多いです。
専門医のワンポイントコメント
肉芽形成を併発した陥入爪や爪甲変形が高度な場合、不適切な挿入により状態を悪化させる事もあるので、慎重に適応を選択する必要があります。またコットンを長期間放置すると不潔になりやすく感染の悪化に注意が必要です。適切な大きさのコットンを使用し、事前に爪棘などをしっかりと処理することが重要です。

爪甲部分(爪棘)切除による治療治療
(セルフケア〇)

爪甲部分(爪棘)切除による治療治療
図3 爪甲部分(爪棘)切除
爪のカドの切り残し(爪棘)により、
皮下血腫となっている
爪甲部分(爪棘)切除による治療治療
ニッパー型爪切りで斜めにカットして
爪棘を取り除いたところ
その名の通り、爪の食い込んでいる部分のみを切除する方法です。陥入爪に対する単純な治療法ですが、変形(爪の巻き具合)が強い場合、変形自体は改善しないので、この方法では一時的な改善を得られますが、その後症状が悪化することも多いです。(やらない方が良いという医師もいます)

しかし爪が薄く変形が軽度な場合や、一時的な炎症による周囲皮膚の腫脹や肉芽形成が悪化の原因である場合など、爪甲(爪棘)の部分切除により炎症を改善することで再発なしに完治することもあるので、私は有用な方法と考えています。

変形が強い場合でも他の保存療法と併用することで再発なしに完治する場合もあります。局所の炎症や肉芽形成の改善や痛みの緩和効果も高いので効果的な方法であるとも言えます。
専門医のワンポイントコメント
図4 爪切用ニッパー
切除の際は再度爪棘が残ることのないよう躊躇せず必要十分な爪を余裕を持って切除することが治療のコツです。これを控えめにしてしまうと、またすぐに痛みがでたり、痛みがまったく改善しないということになってしまいます。

傷ができると感染のリスクもあります。セルフケアとしてはかなり難易度が高いかもしれません。(病院を受診しても不十分な切除で改善せずに私の外来を受診する方もいます。自分でしっかりやるのは少し難しいかなとも思います・・・・)。

刃先カーブになっている一般的な爪切りではなく、直刃のニッパー型の爪切りをを使うと切りやすいと思います。(図4)
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Gutter法(ガター法)による治療(セルフケア×)

Gutter法(ガター法)による治療 a両側の陥入爪
Gutter法(ガター法)による治療 bガター法施行
Gutter法(ガター法)による治療 c 2か月半後

図5 Gutter法の治療例
a両側の陥入爪 / bガター法施行 / c 2か月半後

Gutter法(ガター法)による治療 ab 趾先の陥入爪
ab 趾先の陥入爪
Gutter法(ガター法)による治療 cガター法施行 / d約6か月後
cガター法施行 / d約6か月後
Gutter法は1979年に初めて報告された方法です。陥入した爪甲側縁にチューブを挿入し、物理的に爪棘や爪甲外側縁から周囲軟部組織を保護し、爪により刺激をブロックします。またチューブによる圧迫で肉芽組織の消退をうながす効果もあります。

方法

a 当院では点滴延長用チューブを用い加工している
肉芽形成を伴う両側の陥入爪
チューブの外側から内側へ糸を通し、爪甲の爪床側から背側へ針を通したところ
再度、チューブの向い側で内側から外側へ糸を通す。2か所糸を通したところ
糸を結紮する
反対側も同様に施行
爪甲の辺縁がチューブで保護されている。

b-1 肉芽形成を伴う両側の陥入爪
b-2 チューブの外側から内側へ糸を通し、爪甲の爪床側から背側へ針を通したところ
b-3 再度、チューブの向い側で内側から外側へ糸を通す。2か所糸を通したところ
b-4 糸を結紮する
b-5 反対側も同様に施行
b-6 爪甲の辺縁がチューブで保護されている。

c 施行後1週間:炎症の改善を認める
c 施行後1週間:炎症の改善を認める
点滴用のチューブを適当な大きさにカットし、長軸方向に切れ目を入れと爪甲側縁に挿入します。チューブの固定にはナイロン糸を使用することが多いですが、アクリルの人工爪を利用する場合もあります。入浴やプール、運動でも脱落しないように、確実な固定した方が良いと思います。装着後速やかに痛みは改善し、肉芽が残る場合も数週間で消退する場合が多いです。
専門医のワンポイントコメント
この方法は痛みを伴うので局所麻酔が必要です。セルフケアは難しいと思いますので治療してくれる医療機関を受診することをおすすめします。

(アクリル)人工爪法による治療(セルフケア△)

爪甲側縁が皮膚に陥入し隠れている部分を表面に露出させ、持ち上げた爪を人工爪により補強(広げる)することで、再度陥入することを予防します。爪甲外側縁の皮膚への刺激がなくなるため痛みが緩和されます。
専門医のワンポイントコメント
この方法も爪を露出させる際に痛みを伴うので、通常は局所麻酔が必要です。まだ痛みがない爪に予防的に行う場合などはご自身でのケアが可能かもしれませんが、人工爪などの準備が必要になります。施行している医療機関を受診することをおすすめします。

以上、爪の刺激から周囲軟部組織を保護・隔離して巻き爪を治療する、代表的な方法を解説しました。テーピングやコットンパッキンは自宅でも簡単にできるので、ぜひ一度試してみてください。

(2)爪甲の彎曲(巻き爪)を
矯正して治療する方法

次にワイヤーやクリップを使った方法などを含めて、爪を矯正することで、治療する方法について解説します。

陥入爪の原因が爪甲変形(巻き爪など)に起因している場合、器具を用いて爪甲変形を矯正することで速やかな痛みの改善が得られます。一方、患者さんにより期間は様々ですが、爪甲変形を引き起こした環境の変化がなければいずれ爪は元に戻ることも多く、治療後も環境改善や再変形予防のケア
重要になります。

爪を単純に薄くすることで形状変化を期待する方法や、矯正器具を使うものでは、爪に穴をあけ装着する弾性ワイヤー法爪甲基部に装着可能な3TO-VHO®法、爪甲遠位端に簡便に装着可能なクリップ型矯正器具(ドクターショール®・ネイルエイド®)、爪の表面に矯正器具を貼り付ける治療(B/Sスパンゲ®・弾性プレート)などが代表的な治療法となります。

またその他にも市販品が各種販売されています。

代表的な矯正治療
①弾性ワイヤー(セルフケア△)
②3TO-VHO®(セルフケア×)
③爪甲先端に器具を装着する方法(ネイルエイド®・Drショール® セルフケア◎)
④プレートを用いる方法(マチプレート®・B/Sブレイス® セルフケア×)
⑤爪甲剥削法(セルフケア△)
⑥その他市販品を用いる方法(セルフケア◎)

弾性ワイヤー法(セルフケア△)

弾性ワイヤー法は形状記憶合金性のワイヤーを用い、爪の湾曲を矯正する方法です。爪の先端に装着し、ワイヤーの持つ弾性力が持続的に加わることで爪の湾曲を改善します。私はニッケルとチタンの合金で強い弾性力をもつマチワイヤー®を使用しています。ワイヤーの太さが0.25mmから0.6mmまで0.05mm間隔に8種類あり、爪の厚さや形状に応じて選択します。

爪甲遠位端に装着するスペースがない場合は適応とならない点や、自分自身でやるには少し手技が煩雑な点がデメリットですが、昔からある方法でクリニックや病院で採用しているところは比較的多い治療法です。(ワイヤー治療を行っている施設の探し方
マチワイヤー® a 0.25~0.6mmまで8種類の太さがある
マチワイヤー® b 強い弾性力により彎曲が直線状に復元する

図7 マチワイヤー®
a 0.25~0.6mmまで8種類の太さがある
b 強い弾性力により彎曲が直線状に復元する

マチワイヤー治療例 a治療前
マチワイヤー治療例 b装着直後
マチワイヤー治療例 c装着後4か月
図8 マチワイヤー治療例
a治療前 b装着直後
c装着後4か月

方法

皮膚を傷つけないよう注意しながら、爪甲腹側から背側に注射針などを通し、爪の先端に2箇所穴をあけます。片方の穴よりワイヤーを通し、爪の彎曲に沿ってもう一方の穴を通し余分なワイヤーを切断し、瞬間接着剤等で固定します。
爪甲に穴を開け、腹側からワイヤーを刺入する。
爪甲に穴を開け、腹側からワイヤーを刺入する。
反対側も同様に穴を開け、背側からワイヤーを刺入する。この時皮膚を傷つけないよう留意する
反対側も同様に穴を開け、背側からワイヤーを刺入する。この時皮膚を傷つけないよう留意する
ワイヤーの片側を爪甲内に収まるようにワイヤーの位置を調整する。
モスキート鉗子などで、片側のワイヤー位置を固定し、ワイヤーが爪甲彎曲に沿うようにしっかりと入れ込む
ワイヤー端をカットする
ワイヤーを装着したところ

図9 弾性ワイヤー法の手順
1、2 爪甲に穴を開け、腹側からワイヤーを刺入する。
3、4 反対側も同様に穴を開け、背側からワイヤーを刺入する。この時皮膚を傷つけないよう留意する
5 ワイヤーの片側を爪甲内に収まるようにワイヤーの位置を調整する。
6 モスキート鉗子などで、片側のワイヤー位置を固定し、ワイヤーが爪甲彎曲に沿うようにしっかりと入れ込む
7 ワイヤー端をカットする
8 ワイヤーを装着したところ

爪甲彎曲の改善に伴い、ワイヤー端が爪甲辺縁より露出する場合があるので1・2週間後に確認し必要に応じてワイヤーをカットします。
弾性ワイヤー挿入時の注意点 a 爪甲破損例
弾性ワイヤー挿入時の注意点 b ワイヤー端の露出

図10 弾性ワイヤー挿入時の注意点
a 爪甲破損例
b ワイヤー端の露出

専門医のワンポイントコメント
爪に穴を開ける道具として、病院では21Gや23G注射針を用いる事が多いですが、一般的には手に入らないと思います。また硬い爪の場合、注射針先端がすぐに鈍となり、穴あけに難渋する場合もあります。

一般的に手に入る細い穴あけのドリルや千枚通しなどを利用すると、穴あけが容易となります。ネットを探すと、ワイヤーや穴あけドリルをセットで販売しているところもあるようです。

爪表面でワイヤーと爪の間に隙間がないように、爪に沿わせてワイヤーを装着すると、矯正効果が高まります。隙間ができてしまう場合には、穴を少し大きめにすると、刺入部でワイヤーが斜めになり収まりが良くなります。

爪甲が破損する事もあるので、爪甲が脆弱な場合、ワイヤーの太さの選択を慎重に行う必要があります。

3TO-VHO®法(セルフケア×)

ドイツで開発され普及した巻き爪矯正治療法で、virtuose (熟練した)、humane(人間的、痛みが少ない)、orthonyxie(真っ直ぐな正しい爪)の頭文字をとって命名されました。

加工したワイヤーを左右の爪甲側縁に装着し中央で巻き上げることで爪甲を矯正する方法です。爪甲基部から中央部に装着するため、爪が十分に伸びてない症例や爪甲基部での変形が強い症例などに有用です。手技が煩雑で施術にはライセンス取得が必要なので、扱っている医療機関が少なく、また矯正費用が高額になるのがデメリットですが、装着後3ヶ月程度交換が不要であり患者さんの通院負担が少ない点はメリットです。

同じような仕組み(フック上のワイヤーを爪甲側縁に装着する)のワイヤーが複数種類ありますが基本原理は同じです。(3TO-VHO治療を行っている施設の探し方
3TO-VHO®法 a 治療前 爪甲基部から遠位端までの弯曲を認める
3TO-VHO®法 b 治療後1ヶ月 装着部の弯曲改善を認める
3TO-VHO®法 c 3TO-VHOの機序 巻き上げ用ワイヤーにより中央部が引き寄せられ、それに伴い爪甲側縁が挙上される

図11 3TO-VHO®
a 治療前 爪甲基部から遠位端までの弯曲を認める
b 治療後1ヶ月 装着部の弯曲改善を認める
c 3TO-VHOの機序 巻き上げ用ワイヤーにより中央部が引き寄せられ、それに伴い爪甲側縁が挙上される

方法

専用の施術用工具を用いて、ワイヤーをフック状に加工し側面で爪甲に引っ掛けます。巻き上げ用ワイヤーを利用し左右のワイヤーを締め上げ固定します。余分なワイヤーをカットし、人工爪でワイヤー端を保護します。
3TO-VHOの手順
3TO-VHOの手順
3TO-VHOの手順
3TO-VHOの手順
3TO-VHOの手順
3TO-VHOの手順
3TO-VHOの手順
3TO-VHOの手順

図12  3TO-VHOの手順
a 加工して爪甲側縁にかけるワイヤーと、巻き上用のワイヤーに分かれている
b ワイヤー端を爪甲の大きさに合わせカットする
c 爪甲に引っ掛ける部分を加工作成する
d フック状に加工した部分を爪甲側縁に引っ掛ける
e 加工したワイヤーと巻き上げ用のワイヤー
f 爪甲側縁にワイヤーをかけたところ
g 巻き上げワイヤーを利用し爪甲側縁を持ち上げる
h 巻き上げが終了したところ
i 余分なワイヤーをカットしたところ。この後ワイヤー断端を人工爪等で保護する

専門医のワンポイントコメント
この方法による治療は、施術にライセンス取得が必要なので、セルフケアは原則できません。また弾性ワイヤーのような弾性効果は少なく、装着後矯正が進むにつれ効果が低下するため、爪甲の彎曲が強い場合は、短期間での交換が必要となります。

以下医療従事者向けのアドバイスになりますが、事前に爪甲剥削法を行うなどの工夫が効果的です。ワイヤーを加工する際、爪甲に引っ掛けるためにフック状にする部位以外は、カーブをつけずに直線状にした状態で巻き上げた方が、爪甲側縁の挙上効果が高いと考えます。

クリップ型巻き爪矯正器具
(ネイルエイド®、ドクターショール®)(セルフケア◎)

クリップ型の巻き爪矯正器具は、医療機関でも採用されていますが、患者さん自身が装着することも可能で一般に市販されているのが特徴です。

代表的な器具としては、ネイルエイド®ドクターショール®があります。先に販売されたドクターショール®はCu-Al-Mn合金性のクリップ型の爪矯正器具です。
Drショール®
Drショール®

図13 Drショール®
クリップ状の形態で爪を挟み込み使用する

弾性ワイヤーと比較し矯正力がやや劣り、厚い爪や変形が強い爪には装着が難しく、また靴を履いた時に邪魔になるなどのデメリットはありますが、爪甲への加工が不要で患者自身の装着が可能である点が優れていました。

後に開発されたネイルエイド®は、ドクターショール®の欠点を克服し、強い矯正力で厚い爪や変形が強い爪にも装着可能で、靴を履いても邪魔にならないのが特徴です。
クリップ型矯正器具ネイル・エイド® a 治療前
クリップ型矯正器具ネイル・エイド® b ネイル・エイド®を装着
クリップ型矯正器具ネイル・エイド® c 治療開始 約1ヶ月
クリップ型矯正器具ネイル・エイド® d ネイル・エイド® 背側に2箇所と腹側に3箇所の鈎状弯曲構造

図14  クリップ型矯正器具ネイル・エイド®
a 治療前
b ネイル・エイド®を装着
c 治療開始 約1ヶ月
d ネイル・エイド® 背側に2箇所と腹側に3箇所の鈎状弯曲構造

専門医のワンポイントコメント
二つの商品ともに、患者自身での取り扱いが容易であるためセルフケアが可能です。自信で付け外しができるため、矯正後再発予防を目的とし使用する事も可能です。付け外しが可能なため、脱落に注意が必要で、テープなどで固定するか、靴下を履いている時のみ装着するなどの工夫が必要となります。その他の市販品も含めて、詳しく紹介してる記事も参考にして下さい。

プレートを用いる方法(セルフケア△)

爪甲背側に接着剤でプレートを固定し、プレートの持つ弾力で爪甲矯正を期待する方法です。形状記憶合金プレート(マチプレート®)グラスファイバーを利用したプレート(B/Sブレイス®)などが代表的な器具です。

矯正力や固定性に不安があり、医療機関での使用報告は少ないです。主に巻き爪治療院などの非医療機関で繰り返し装着することで少しずつ改善させる場合が多いように思います。

ワイヤーやクリップ型矯正に比較して矯正効果は弱いですが簡便に装着可能であり、薄い爪に装着して痛みを取り除く効果を期待したり、費用がかかりますが、繰り返し装着をして長期間での改善を目指すのであれば有用だと思います。
専門医のワンポイントコメント
ご自身でやる場合は、爪への接着が難しい場合が多いです。
採用施設などで施行してもらうことをお勧めします。

爪甲剥削法(セルフケア△)

爪甲剥削法 a 高度な陥入爪に対して爪甲剥削術施行
爪甲剥削法 a 高度な陥入爪に対して爪甲剥削術施行
爪甲剥削法 a 高度な陥入爪に対して爪甲剥削術施行
爪甲剥削法 b 施行直後:爪の彎曲が改善している
爪甲剥削法 b 施行直後:爪の彎曲が改善している
爪甲剥削法 b 施行直後:爪の彎曲が改善している

図15 爪甲剥削術
a 高度な陥入爪に対して爪甲剥削術施行
b 施行直後:爪の彎曲が改善している

爪を薄く削ることで爪の柔軟性が回復します。それに伴い爪の形態が改善することで、側縁の圧迫を軽減させる方法です。この方法単独では治療効果が得られない場合も多いですが、爪の湾曲部分を少し削り、ワイヤー療法など他の保存療法と併用する効果的です。

爪白癬(爪水虫)などが併発している場合、抗真菌外用薬の浸透性を高める効果も期待できます。
爪白癬に対する部分剥削法 A 治療前:爪白癬による爪甲白濁を認める
爪白癬に対する部分剥削法 B グラインダーを用いて、爪甲部分剥削法を施行。
爪白癬に対する部分剥削法 C 処置後9ヶ月 処置後外用薬で加療、爪白癬の改善を認める

図16  爪白癬に対する部分剥削法
A 治療前:爪白癬による爪甲白濁を認める
B グラインダーを用いて、爪甲部分剥削法を施行。
C 処置後9ヶ月 処置後外用薬で加療、爪白癬の改善を認める

専門医のワンポイントコメント
フットケア用の専用グラインダーが各メーカーから販売されていますが、高額のためセルフケアに用いるのは難しいです。専用の器具は、爪を削るときの摩擦による発熱を、水をスプレーすることで抑える効果などもあります。一般工具用のルーターと霧吹きでも対応可能ですが、摩擦熱による爪床熱傷や、削りすぎに注意が必要です。
フットケア用グラインダー(湿式)
一般工具用ルーター

図17
aフットケア用グラインダー(湿式)
b一般工具用ルーター

基本的にはセルフケアは困難と考え、対応してくれる施設を受診するのが望ましいと考えます。

まとめ

このページでは、手術以外の巻き爪の治療(保存的治療)について学びました。その方法は以下の2つに大別できます。

・爪の刺激から周囲軟部組織を保護・隔離して巻き爪を治療する方法
・爪甲の彎曲(巻き爪)を矯正して治療する方法

それぞれ様々な方法がありますが、セルフケアが可能なものも多くあります。このページを参考にご自身でも試してみてください。巻き爪の治療には正しい知識が重要になります。このサイト全体をご覧いただくと、爪の解剖、自分で出来るセルフケアから手術まで、巻き爪の予防から治療までを詳しく解説しています。ぜひしっかり学んで、正しい巻き爪の知識を身につけましょう。またわからない事はこちらでお気軽にご相談下さい。