巻き爪の原因と予防(セルフケア)

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どうして巻き爪になるの?
どうしたら予防できるの?

正しい歩き方、爪の切り方
インソール 爪切りの選び方

皆さんは巻き爪にもちろんなりたくないですよね。このページでは、巻き爪にならないために、どのような事に注意したら良いか、自身でできる予防のためのセルフケアはどうすればよいかなどを学びます。

それにはまず巻き爪になってしまう原因を理解し、それを元に予防対策をすることが重要です。私がおすすめする爪切りなどのセルフケアの道具も紹介しています。

ご自身が巻き爪という方だけではなく、ご家族や看護・介護されている方が巻き爪という方も参考にして頂ければと思います。

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【記事執筆】
埼玉医科大学 形成外科 医師 簗 由一郎

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巻き爪の原因

まず、巻き爪の原因について学びます。巻き爪になる原因は大きく3つあります。それは環境的要因・遺伝的要因・病的要因です。それぞれについて詳しく解説します。

巻き爪の原因:環境的要因

巻き爪になる原因の1つ目環境的要因です。環境的な要因はさらに2つにわけることができます。

1つは狭い靴などによる圧迫です。ヒールのあるパンプスなどの圧迫が原因で巻き爪になることも多いです。

もう一つは歩き方です。指がしっかりと地面を踏みしめる歩き方ができていないと巻き爪になりやすいです。特に、外反母趾などで足の形状が変化している場合は注意が必要です。

外反母趾は、歩くときに地面からの力が親指に伝わりづらいだけでなく、人差し指によって、親指が上からも押されるなど、巻き爪になりやすい要因が重なります。
本来、正常な爪は巻こう巻こうとする自然な力が加わっています。それに対して、歩行などで地面を踏みしめることで、下から爪を押し上げる力が加わります。上からの巻こうとする力と下からの押し上げる力のバランスで爪の形が保たれています。

狭い靴を履くことで巻く力が強くなったり、歩けなくなったり痛みで地面を踏みしめることができなくなり、下から押し上げる力が弱くなってしまうと、バランスが崩れ巻き爪になってしまいます。
正常な状態、巻き爪になりやすい状態
ですので、高齢の寝たきりの患者さんや、足の親指が浮いてしまうような歩き方の患者さんは巻き爪となることが多いと感じています。

ただ、寝たきりの患者さんでも巻き爪にならない方もたくさんいます。巻き爪は環境的な要因だけが関与している訳ではないのが分かります。
専門医のワンポイントコメント
先の細いハイヒールは、それ自体の圧迫で巻き爪の原因にもなるだけでなく、ハイヒールは外反母趾の原因となり、外反母趾により親指にうまく力が加わらないことで、それがさらに巻き爪の原因となります。巻く力が強まり、押し上げる力が弱まり2重に巻き爪を引き起こします。

巻き爪の原因:遺伝的要因

そこで次にあげられる2つ目の原因が遺伝的要因です。

親子で顔が似てくるように、足や足の爪の形も似ていることが多いです。実際に外来をしていると、お子さんの巻き爪治療で受診されたお母さまが巻き爪だったということは非常に多く経験します。

もともと巻き爪になりやすい遺伝的素因というのがあります。そこに環境的要因が加わると巻き爪になってしまうということになります。
専門医のワンポイントコメント
爪の形質自体が遺伝する事に加えて、生活環境も影響していると思います。親が深爪であれば、子供に間違った爪の切り方を教えることで親子で巻き爪という場合や、親がおしゃれなパンプスを履いていれば子供の似たような靴を好きになるかもしれません。

巻き爪の原因:病的要因

最後に3つめの要因として、爪や足指の病気があげられます。

例えば爪の下や骨に腫瘍が存在すれば、それが原因で爪が巻く事がありますし、爪の水虫といわれる爪白癬という病気で爪が巻くこともありますし、外骨腫という骨の病気で爪が変形することもあります。

こういった疾患がある場合これらの病気の治療が優先されるのは言うまでもないことです。
爪白癬
外骨腫(レントゲン写真)
外骨腫(臨床写真)
専門医のワンポイントコメント
いつか記事にしたいなと思っていますが、爪白癬(爪水虫)は塗り薬ではなかなかよくなりません。飲み薬は副作用を心配されて採用していない先生も多いですが、外用薬で良くならない場合は飲み薬も検討した方が良いと思います。

巻き爪の原因:その他

深爪も巻き爪に関与していると言われています。深爪により、下から爪を支える面積が減少することで爪が巻きやすくなる可能性があります。また、たとえ、爪が巻かなくても、深爪により、爪のカドの切り残しや、爪切りの際に皮膚を傷つけてしまう事で陥入爪となることも多いです。あとで解説する正しい爪の切り方が重要となります。

また、これは巻き爪というよりは深爪の原因になりますが、肥満は爪の痛みに悪い影響を与えます。爪周囲の皮膚が盛り上がっていると、爪が食い込み陥入爪となりやすく、また体重により過剰な負担が爪にかかる事になります。
深爪が原因の陥入爪
爪の角(カド)の切り残し部分を、
改めてカットした例
専門医のワンポイントコメント
一度深爪をしてしまうと、爪がなくなった部分に皮膚が盛り上がってしまいます。そうすると爪を伸ばしたくても痛みでまた深爪をする事になってしまいます。テーピング治療などで対応できれば良いですが、ひどい場合は手術治療が必要となります。

巻き爪の予防:どうしたら予防できるの

巻き爪となる原因が理解できれば、予防はそうならないような対策が中心となります。以下の4つが巻き爪予防に重要だと考えます。一つずつ詳しく解説するので、巻き爪にならない方法を学んでいきましょう。

(1)正しい歩き方をする(指を使う歩き方)
(2)正しいフットウェアを整える(靴、靴の履き方、インソールなど)
(3)正しい爪の切り方(深爪をしない、スクエアカット)
(4)清潔を保つ(皮膚の病気の予防)

巻き爪の予防:(1)正しい歩き方

正しい歩き方により、足指に適切に力が加わり爪を下から持ち上げるので、巻き爪が予防されます。正しい歩き方のポイントを学びましょう。

正しい歩き方

①背筋を伸ばし正面を向き、まっすぐに足を出します。
②かかとから着地し、足裏全体に体重をかけます。腕は自然にふります。
③上半身が前に出たら、反対側の足が地面に着くタイミングで、母趾でしっかり蹴り出すように歩きます。

※巻き爪予防には親指側に重心をのせる、足指をしっかり使う事を意識する事がポイントです。
正しい歩き方

巻き爪の予防:(2)正しいフットウェア

靴の選定や正しい履き方は巻き爪予防にとても重要です。また、意識的に歩き方を矯正することは実際には難しい場合も多いです。そういった場合はインソールを使うことで足裏に適切な力が加わる歩き方が可能になり、巻き爪が予防できます。正しいフットウェアを整えましょう。

靴の選び方のポイントを示します

つま先に余裕がある
もちろん先が細く足を圧迫する靴は良くないですし、ヒールが高い靴も巻き爪予防という点では好ましくないです。歩行時、足は靴の中で1センチ近く前後移動すると言われています。なので、つま先から靴の先までに1~1.5センチほど余裕のある靴を選ぶと良いです。もちろん、つま先が解放されているサンダルでもOKです。(クロックスなど指先が保護されているサンダルはNGです)
つま先が覆われていないサンダル
つま先が覆われていないサンダル
つま先に余裕がある靴
足指の上部にも余裕がある靴
一般的な靴は、指の部分では上限のスペースが狭くなっている事が多いです。

爪が巻いてくるとこのスペースがあまり狭いと圧迫されより悪化する場合があります。
つま先の余裕だけでなく上下の余裕も気にして靴を選びましょう。
足指の上部にも余裕がある靴
ファスナー付きの靴
ファスナー付きの靴
足の甲(足首)がしっかり固定できる靴
足首で靴がしっかりと固定されていないと、歩行時に足が前に移動してしまい、結果として指先が圧迫され巻き爪を悪化させます。

理想的には紐靴やマジックテープで足首がしっかり固定できる靴が望ましいです。もちろん、紐靴でも脱ぎ履きがしやすいようにいつも緩めていてはまったく意味がありません。

靴の脱ぎ履きで紐を毎回結びなおすのが大変だと感じる方は、紐靴にファスナーがついている靴を選ぶと良いと思います。
正しい靴を選んでも、履き方が間違っていれば意味がありません。正しい履き方をすることが重要です。

正しい靴の履き方のポイントは踵で靴の位置を合わせる事です。靴を履いたら、踵を床でトントンと叩いて、踵を靴に合わせます。その状態で足の甲の部分をしっかり固定します。

正しい履き方
せっかくファスナー付き紐靴を購入しても、踵の位置が合っていない状態で紐を縛ってしまえば、歩行時に靴の中で足が少しずつ前に移動してしまいます。

踵をしっかり合わせて足首で靴を固定すると、足が靴の中で動かず一体となり、靴のトラブルが少なくなります。

※歩行していると、少しずつ紐が緩んでくる場合があります。そんな場合は適宜紐を締め直して下さい。
専門医のワンポイントコメント
外来で診察していても、正しい靴の履き方が出来ていない患者さんは多いです。面倒だとは思いますが、靴紐をしばるだけで、歩きやすくなりますし、足の痛みが不思議と良くなったとおっしゃる方も多くいます。

インソールについて

年齢を重ねると、足の骨と骨を固定する靭帯がゆるみ足のアーチが崩れてきます。そうなると、正しい歩き方をしても、足底にうまく力加わらない場合も多いです。

そんな時はインソールで補助してあげることで、正しい歩き方をするのに近い効果を得られます。

理想的には、患者さんの足の型をとったオーダーメードのインソールを作成するのが良いですが、費用も高く対応してくれる医療機関や施設がなかなか見つからないも現状です。
正常の足の骨格
正常の足の骨格
骨格の崩れで浮指となっている
骨格の崩れで浮指となっている
オーダーメードのインソール型どり
オーダーメードのインソール型どり
インソール使用前
インソール使用前
足趾が浮いて圧がかかっていない
インソール使用後
インソール使用後
足趾に圧がしっかりかかっている
専門医のワンポイントコメント
オーダーメードのインソールがもちろん一番良いですが、最近は市販のインソールもお手頃な価格で販売されています。既製品なので足の形によって合う合わないはあると思いますが、一度試してみる価値はあると思います。

巻き爪の予防:(3)正しい爪の切り方

巻き爪の予防だけでなく陥入爪の予防という意味でも、爪の正しい切り方は重要です。
次に爪の正しい切り方を学びましょう。(巻き爪と陥入爪の違い
爪の切り方の最大のポイントは「スクエアカット」つまり四角に切る事です。

皮膚の形にそって丸くカーブを付けてカットしたくなるところですが、端が食い込まないように、カドを少し残して爪を切るのが、陥入爪とならないための重要なポイントです。

正しい爪の切り方​
角がとがっている場合は爪やすりなどで少しずつ削るようにして下さい。
正しい爪の切り方
間違った爪の切り方
注意が必要な爪の切り方
その他爪の切り方のポイントも含めて、爪の切り方で注意すべき点を以下にまとめます。

①爪の先端は、丸いカーブではなく四角い形にカットする。
 カドはヤスリで削る。
②爪の先端の長さは、皮膚の先端の同じ長さになるようにカットする。
 深爪をしない、伸ばしすぎない。
③爪が割れないように、少しずつカットする。
 特に両端に切り残し(爪棘)がないよう注意する。
④入浴後など爪が軟らかい時にカットする。
⑤爪が割れやすい場合は、積極的に爪やすりを使用する。

上記の注意点に気を付けながら爪をケアすれば、巻き爪・陥入爪になりにくくなると思います。
専門医のワンポイントコメント
爪切りの頻度は個人個人で爪の伸び方が違うので一概には言えませんが、足の指はおおむね3週間~1か月ぐらいの頻度で良いと思います。頻回の切りすぎは深爪になりやすいので注意しましょう。
正しい爪の切り方には、爪切りの選び方も重要です。
足の指の爪切り選択のポイントは、

よく切れること
直刃であること

の2点です。
切れ味が悪いと、爪が割れたり、爪の断面が段差になり引っかかったりするなどの問題がおこります。インターネットなどで安い爪切りが販売されていますが、私も何個か試しに購入して使ってみましたが、良いものは見つけられませんでした。爪切りに関しては日本製のしっかりしたものをお勧めします。

刃が直刃(まっすぐ)であることもポイントです。 一般的な爪切りは爪を丸くカットしやすいように、軽いカーブがついている事が多いです。手の爪などを切るときはこのカーブが使いやすいのですが、足の爪は「スクエアカット」が基本となるので、直刃が使いやすいと思います。

爪のカドの切り残し(爪棘)が痛む場合などは、やむを得ず、爪のカドを斜めに深くカットする場面があります。(保存治療 爪甲部分(爪棘)切除による治療)そんな時も、よく切れる直刃の爪切りであれば、爪の切り残しなく、真っすぐカットが可能となります。
ニッパー型の直刃の爪切り
ニッパー型の直刃の爪切り
一般的なカーブがついている曲刃の爪切り
一般的なカーブがついている曲刃の爪切り
巻き爪に適した爪切りは直刃になります。私が外来で使用しているおすすめの爪切りです。ともに日本製です。
ネイルニッパー ネイルプロⅡ
ネイルニッパー ネイルプロⅡ
製造:マルト長谷川工作所
つめ切り CLASSIC 足用
つめ切り CLASSIC 足用
製造:諏訪田製作所
何年も繰り返し外来の患者さんの爪を切って実感しますが、切れ味が長持ちします。ペンチのように刃が左右に広がるので、かなり厚い爪も切る事ができます。スワダの爪切りは、切れ味が落ちるとメーカーで刃先を削って切れ味を復活してくれます。以前外来で別の先生が過ってワイヤーカットに使用して刃先をダメにしてしまった事がありましたが、その時もメーカーで削り治して頂き、その爪切りは今も現役で使用しています。

介護・看護されている方がお使いになるのであれば、ネイルプロⅡのようなニッパー型の爪切りも扱いやすいですが、ご自身で爪を切る場合は、諏訪田製作所の爪切りのような形状が使いやすいかもしれません。

やすりに関しては、皮膚に傷がつきにくい、ガラス爪やすりが良いと思います。100円ショップなどでも取り扱っているようなので、気軽に購入できるかと思います。やすりをかける時は、なるべく1方向に動かすようにすると不用意に爪が欠けたりしないです。
ガラスつめやすり
専門医のワンポイントコメント
私が巻き爪外来を始めたころは、ガラス製の爪やすりが売っているところが少なく、患者さんに購入してもらうのが少し面倒でしたが、今はどこの100円ショップでも扱っている場合が多いので助かっています。

巻き爪の予防:(4)清潔を保つ

巻き爪の直接的な予防というわけではありませんが、足を清潔に保つことも重要です。
清潔に保つことは、爪や皮膚の病気の予防になります。

爪の病気が原因で巻き爪になることもあると考えれば、清潔を保つことは間接的に巻き爪の予防になると言えるでしょう。

また巻き爪になると、爪と皮膚の間に角質などがたまりやすくなります。たまった角質は痛みの原因になる事もあるので、フット用ゾンデや歯ブラシなどのケアグッズを使って清潔に保つことも大事です。
足の清潔を保つために重要なことは、足をしっかり観察することです。目で見て、手で触って、場合よっては鼻で匂いを嗅いで、普段と変化がないか確認することです。

糖尿病などの病気があると足の感覚が鈍くなることがあります。痛みがなく巻き爪が進行することがあるのでより気を付けて下さい。
見て
触って
匂って
専門医のワンポイントコメント
足のケアには、保湿のクリームを塗ることをおすすめします。クリームそのものの効果だけでなく、塗るという行為そのものが、足を触って観察する事につながります。

まとめ

このページでは、巻き爪になる原因と、巻き爪にならないための予防について学びました。

巻き爪の原因には以下の3つの原因があります。
①環境的
②遺伝的
③病的


予防には以下の4つの対策が大事です。
①正しい歩き方をする
②正しいフットウェアを整える
③正しい爪の切り方
④清潔を保つ


巻き爪の予防には正しい知識が重要になります。このサイト全体をご覧いただくと、爪の解剖、自分で出来るセルフケアから手術まで、巻き爪の予防から治療までを詳しく解説しています。

ぜひしっかり学んで、正しい巻き爪の知識を身につけましょう。またわからない事はこちらでお気軽にご相談下さい。