陥入爪の手術における失敗例とは?主な手術方法&メリット・デメリットをご紹介
目次
痛みや炎症を伴う陥入爪は、セルフケアや保存的治療法で症状が改善されないと手術という選択肢があります。
陥入爪の手術はいくつか方法がありますが短時間で終わる方法もあり、日帰りでの処置が可能な場合もあります。
簡単にできるイメージがあったとしても、手術となると失敗例がないか気になる方も多いでしょう。
<この記事で分かること>
陥入爪の手術が必要なケースとは?
陥入爪の手術の種類とは?
陥入爪の手術の失敗例とは?
陥入爪の手術の方法やメリット・デメリット、失敗例などについてまとめました。
この記事の監修をお願いしている簗医師の、解説記事へのリンクを文中に掲載しています。より詳しく知りたい方は、簗医師の解説記事もご覧ください。不明な点は掲示板(https://medical-media.jp/bbs/)からご相談ください
専門医のワンポイントコメント
一般的に「巻き爪」と「陥入爪」という言葉は混同して使われている場合がありますが、「巻き爪」と「陥入爪」は別の状態を表します。 この記事ではわかりやすいように一部「陥入爪」を含めて「巻き爪」という言葉で表現している場合があります。違いについての詳細は解説記事を参照してください。
簗医師の解説記事 https://medical-media.jp/basic/#s5 |
手術が必要な陥入爪とは
巻き爪が彎曲した状態になるだけでなく、さらに側爪郭に陥入し炎症を引き起こした状態の「陥入爪(かんにゅうそう)」は、痛みを伴い炎症を起こしたり、腫れが起きる場合があります。
陥入爪の治療としては、まずは手術をしない「保存的治療法」を選択するケースが多いでしょう。
しかし保存的治療法を継続しても「効果が感じられない」「何度も繰り返してしまう」という場合には、手術を検討します。
陥入爪を放置したままにしてしまうと、痛みや腫れの範囲が広がるだけでなく、爪が痛く歩行に支障がでたり、腰痛や転倒の危険もあります。
陥入爪の重症度によっても適切な治療法は異なりますので、医師との相談により適切な治療法を選択しましょう。
陥入爪の手術方法3つ
手術の目的は、爪が皮膚に食い込むのを改善するために爪の幅を短くするものです。
陥入爪の手術の方法はこの3種類に限らず病院ごとに異なった方式を採用している場合もありますが、ここでは陥入爪の3つの手術方法について、ご紹介します。
- 国内で最も普及している「フェノール法」
- 水酸化ナトリウムを使用する「NaOH法」
- 爪母・爪床を物理的に切り取る方法
国内で最も普及している「フェノール法」
フェノール法とは、フェノールという医薬品を使用する手術です。
フェノールは、昔から消毒液として使用されている医薬品のひとつです。
陥入している爪の左右の部分を抜き取り、爪を作る機能のある「爪母」という組織をフェノール剤で消毒するという手術方法です。
国内の陥入爪の手術では最も普及していて、成功率も高いので安心して受けられる手術といえるでしょう。
- 足の指にブロック麻酔をかける
- 切除する爪をはがし、割れ目を入れる
- 陥入している爪を部分的に抜く
- フェノール剤で爪母を処理する
- 施術部位を洗浄し、包帯を巻く
手術の目安時間は20分ほどで、当日自分の足で歩いて帰宅できます。
忙しい方でも、1日で治療ができるのがフェノール法の大きなメリットです。
水酸化ナトリウムを使用する「NaOH法」
NaOH法とは、水酸化ナトリウムという石鹸の製造にも使われる成分を用いた陥入爪の手術法です。
手術の主な方法はフェノール法と同様で、使用する薬剤に違いがあります。
- 足の指にブロック麻酔をかける
- 切除する爪をはがし、割れ目を入れる
- 陥入している爪を部分的に抜く
- 爪母にNaOHで爪母を処理する
- 酢酸でNaOHを中和させる
- 施術部位を洗浄し、包帯を巻く
フェノール法と同様に、手術時間は短時間で当日歩いて帰宅できます。
NaOHの塗布が不十分だと、処理をしたはずの爪母組織が再生し、爪が生えてきてしまう場合があります。
爪母・爪床を物理的に切り取る方法
陥入爪の手術では「児島法」「鬼塚法」と呼ばれる手術もあります。
これらは爪を作る部位である「爪母」や、皮下組織の一部である「爪床」を切って取り除く方法です。
メスや剪刃(せんとう)という手術用のハサミを使ってでの切除となり、最後には縫合します。
抜糸が必要となりますので、再来院が難しい方や早く終わらせてしまいたい方には不向きな方法となるかもしれません。
- 足の指にブロック麻酔をかける
- 陥入している爪を切除する
- 爪を切除した箇所の爪床と爪母も切除する
- 縫合する
- 必要であれば添木などで安静に過ごす
- 2週間後に抜糸をする
比較的昔からある手術法となり、施設によってはフェノール法ではなくこちらの手術方法を採用している場合もあります。
専門医のワンポイントコメント
いろいろな手術方法がありますが、私はフェノール法をお勧めしています。以前は鬼塚法や児島法を行っていましたが、最近は実施する機会が減っています。 |
陥入爪手術の失敗が疑われる例
陥入爪の手術をした後に「あれ?これって失敗された?」と不安になってしまう場合があるかもしれません。
手術の失敗とは、具体的にどのような例があるのでしょうか。
陥入爪の失敗だと思われやすい例は、こちらです。
- 爪の切除による爪幅が狭くなる
- 手術で処置をした部分が化膿した
- 爪甲の成長障害
- 巻き爪が再発した
爪の切除による爪幅が狭くなる
陥入爪の手術は、爪の横幅を短くして爪が皮膚に食い込むのを緩和させる目的があります。
そのため爪の切除によって、爪幅が狭くなるのは失敗ではありません。
手術によって横幅を短くした部分は、二度と生えてきません。
手術前にきちんと説明がありますので、気になる点があれば確認しておきましょう。
手術で処置をした部分が化膿した
陥入爪の手術は、爪を切除していますので創部からばい菌が入り、化膿してしまうケースもあります。
創部の可能を防ぐために、抗生剤が処方されているはずなので忘れずに服用しましょう。
フェノール法やNaOH法は1日で手術は終わりますが、手術後の過ごし方については医師の指示に従いましょう。
爪甲の成長障害
外科的手術により爪母まで手を加える手術は、丁寧に行わないと成長障害といったトラブルになる可能性があります。
切除したはずの爪母から爪が生えてきて、変形した爪が生えてきたといったケースもあります。
爪母や爪床を切除するのであれば、適切に切除しなくてはいけません。
手術後すぐにはこのような症状がなくとも、数年経って症状が出る場合もあります。
巻き爪が再発した
陥入爪の手術をしたにも関わらず、爪が生えてくると巻き爪が再発してしまうケースもあります。
爪母が再生し、爪がまた生えてきた際には注意が必要です。
手術をしてしばらくは経過観察のため、通院を続けると安心です。
フェノール法のメリット・デメリット
陥入爪の手術の方法はいくつかあり、それぞれメリットやデメリットがあります。
手術の失敗もゼロではないので、患者さんご自身がメリットやデメリットを適切に把握し、手術方法についても選択できるようにしておくといいでしょう。
陥入爪のフェノール法のメリットとデメリットについて、ご紹介します。
- フェノール法のメリット
- フェノール法のデメリット
フェノール法のメリット
- 痛みが少ない
- 炎症を起こしていても手術可能
- 爪母にアプローチするので再発リスクが低い
- 手術時間は20分ほどと短時間
- 当日から歩ける
- 翌日からシャワーが可能
- 多くの病院で採用されている
- 保険適用で費用が抑えられる
フェノール法の大きなメリットは、爪母切開するよりも痛みが抑えられるという点です。
爪母という爪の根元にアプローチするので、再発のリスクも少ない方法だといえます。
当日から自分の足で歩いて帰宅できますので、手術後の生活制限も少ないです。
保険が適用になりますので、自費での負担が少なく根治的な処置ができるというメリットもあります。
フェノール法のデメリット
- 切除した爪は二度と生えない
- 残った爪が巻き爪になる場合もある
- 1週間程度は運動を控える
- 手術当日の飲酒不可
フェノール法のデメリットについて正しく理解していれば、メリットの方が多いと感じる方が多いでしょう。
傷の治りをよくするために、運動や飲酒といった血行を促進するような行動は避けましょう。
再発のリスクが低いといわれるフェノール法ですが、必ず再発しないというわけではありません。
ご自身の陥入爪の状態でどのようなリスクがあるのかは、手術前に確認しておくと安心です。
NaOH法のメリット・デメリット
フェノール法に似たNaOH法のメリットとデメリットについてもご紹介します。
- NaOH法のメリット
- NaOH法のデメリット
NaOH法のメリット
- 痛みが少ない
- 爪母にアプローチするので再発リスクが低い
- 手術時間は20分ほどと短時間
- 完治するまでの時間が早い
- 通院回数が少なくすむ
- 保険適用で費用が抑えられる
水酸化ナトリウムを使用しているので、完治までの時間が早い傾向にあります。
NaOH法も保険適用なので、費用面では心配なく治療を受けられます。
NaOH法のデメリット
- 切除した爪は二度と生えない
- 爪母組織が再生して爪が生える場合がある
- 1週間程度は運動を控える
- 手術当日の飲酒不可
- 取り扱いの病院が少ない
NaOH法はフェノール法と比べると、採用している病院が少ないといえるでしょう。
どうしてもNaOH法にこだわって手術をしたいという場合には、病院選びが難しくなる可能性もあります。
爪母・爪床の切除のメリット・デメリット
爪母や爪床を切除する「鬼島法」や「児島法」のメリットやデメリットについても、確認しておきましょう。
- 爪母・爪床の切除のメリット
- 爪母・爪床の切除のデメリット
爪母・爪床の切除のメリット
- 確実に爪母や爪床を切除する
- 総合的な治療期間は短い
- 保険適用で費用が抑えられる
物理的に組織を切除するので、確実に爪母や爪床の切除が可能な方法です。
順調に治療をしていけば、治りが早いというのもメリットといえますので、長期的なお休みをとれる方や普段から車椅子を利用されている方は、この方法がとられる場合もあります。
費用は保険適用となりますので、自己負担分の費用が抑えられます。
爪母・爪床の切除のデメリット
- 他の方法より痛みがある
- 術後の安静が必要
- 両足の場合は入院する場合もある
- 抜糸が必要になる
- 術者の技術に左右される
フェノール法やNaOH法と比較すると、痛みがあるのが患者さん本人にとってのデメリットとなります。
痛みで歩くのが難しいというケースもありますので、両足の場合は入院する可能性もあります。フェノール法に比べると手術の難易度が高いため、再発率などは術者の技量い左右されます。
術後は医師の指示通りに、安静に過ごしましょう。
陥入爪で手術をしない場合の保存的治療法
巻き爪による陥入爪は、手術以外の治療法もあります。
巻き爪の治療方法はひとつではありませんので、状況に応じて適切な方法を選択しましょう。
それぞれの治療法の特徴について、ご紹介します。
- クリップ法
- ワイヤー法
- プレートを用いた矯正治療
- ガタ―法
クリップ法
クリップ法とは、クリップ型の矯正器具を用いて、巻き爪を治療する方法です。患者さんご自身で取り外しが可能で、爪が薄い方でも使用できます。病院で相談してもいいですし、セルフケアとして初期段階で試してみるといいでしょう。
ワイヤー法
ワイヤー法とは、形状記憶合金で作られた専用のワイヤーを爪につけて、巻き爪を改善させる治療です。
爪の両端に穴をあけ、ワイヤーを通して1~2ヶ月ほど生活し、爪が伸びてきたらカットします。
ワイヤーが元に戻ろうとする力を利用する方法です。
プレートを用いた矯正治療
特殊な樹脂や金属を用いて作られたプレートを、爪の表面に接着して爪の変形を改善させていきます。
見た目が目立ちにくく、ネイルサロンでも取り扱いがある場合もあるようです。
プレートの接着で失敗するといけないので、病院で処置してもらうのがおすすめです。
ガタ―法
ガター法とは、爪と皮膚の間にチューブを入れて、チューブで爪の先を保護し食い込みを防ぐ治療です。
局所麻酔が必要な処置ですが、施術直後から痛みが緩和されます。
入浴制限もなく、普段通りの日常生活が送れます。
自宅で巻き爪治療はできるのか
「医療機関に行く時間がない」「自宅で巻き爪の改善をしたい」という方は、市販のグッズを利用するのもひとつの方法です。
巻き爪用のクリップや皮膚を保護するタープなど、店頭やネット通販で購入できる商品もあります。
ご自身の症状や希望の価格に合わせて、できそうなグッズを購入してケアをスタートさせてみましょう。
ただし痛みや炎症が起きてしまっている状態の場合は、セルフケアでの改善は難しいでしょう。
必要であれば医療機関を受診し、悪化する前に適切な治療を受けてください。
巻き爪の治療は、皮膚科・形成外科・フットケア外来といった機関で受診できます。
専門医のワンポイントコメント
巻き爪をしっかりと対応してくれる医療機関は、まだまだ少ないと考えています。医療機関を探すのは難し部分もありますが、以下の記事で医療機関の探し方についてい解説しているので参考にしてください。 簗医師の解説記事 https://medical-media.jp/column/when-it-becomes-an-ingrown-nail/ |
陥入爪の適切な治療を受けよう
陥入爪の治療は、クリップ法やワイヤー法といった保存的治療から、矯正治療、外科的手術など、さまざまな方法があります。
重症度によって、適切な治療法が異なりますので、ご自身にあった治療をしていきましょう。
手術を受ける際には、「どんなトラブルが考えられるのか」といった説明もきちんと受けてください。
メリットばかりが目に入るかもしれませんが、万が一の状態についても納得した上で手術を受けるようにしましょう。
陥入爪の手術は、基本的には1度してしまえば爪が生えてこなくなる処置です。
再発率も低く、根治治療ともいわれますので、怖がらずにまずは専門医にご相談ください。
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【監修 埼玉医科大学 形成外科 簗由一郎医師】
ご不明な点は、相談掲示板(https://medical-media.jp/bbs/)からご相談ください