巻き爪・陥入爪の治療法のひとつとして、フェノール法があります。フェノール法は、メスを使わない施術として注目を集めており、巻き爪・陥入爪の改善が期待されているのです。
今回の記事では、フェノール法の魅力や注意点、治療の流れなどについて解説します。フェノール法について関心がある方は、ぜひ参考にしてみてください。
フェノール法とは
フェノール法とは、フェノールという薬剤を用いて爪の一部を再生できなくする施術です。爪を形成する爪母細胞に直接働きかけることによって、食い込んでいる部分の爪を消滅させます。
フェノール法の施術をした部分の爪が生えなくなるため、再発のリスクが少ない点が特徴です。しかし爪の幅がある程度狭くなってしまうので、施術範囲については事前にしっかりと相談しておく必要があります。基本的に入院する必要はなく、施術当日に帰宅可能です。
フェノール法の4つのメリット
ここからは、フェノール法のメリットについて解説します。
炎症が激しい場合でも行える
フェノール法は、食い込んだ爪を取り除きフェノールで処理をしたあと、原則として傷を縫い閉じずに、開放した状態で自然治癒を目指します。創部を閉鎖しないので、化膿や炎症が激しい巻き爪や陥入爪に対しても適応できる点が魅力です。
他の手術より痛みが少ない
フェノール法では、麻酔の注射による多少の痛みはありますが、通常の手術と異なり、メスを使用しません。皮膚を切ったり縫い合わせたりすることがないため、施術後も痛みを引きずることはほとんどありません。
また、フェノールには鎮痛作用があります。知覚の末梢神経にも作用するため、爪が食い込んだ部分や肉芽を形成した部分にも作用があり、術後の痛みが少なくできることもポイントです。術後の痛みが心配な方は、フェノール法をチェックしてみてください。
手術後すぐに帰宅できる
フェノール法では術後の安静が必要ないため、施術後は入院せずにすぐ帰宅できる点も魅力です。翌日から通常通り靴も履けるので、日常生活にスムーズに戻れます。部活や仕事などをなかなか休めない方は、日帰りで受けられるフェノール法に注目してみてください。
再発リスクが低い
フェノール法に限らず爪の幅を狭くする手術では、爪を形成する爪母細胞を直接処理するため、再発リスクが低い点も魅力です。単純に爪をカットしただけで爪母自体を処理しないと、爪は再び生えてきます。これまで巻き爪・陥入爪を何度も繰り返してきた方は、爪を生えてこなくするフェノール法を試してみるのがおすすめです。
フェノール法の3つの注意点
ここからは、フェノール法の注意点について解説します。
爪の幅が狭くなる
フェノール法をすると、切除した範囲の爪が永久的に生えなくなるため、爪の幅がある程度狭くなる点に注意しましょう。爪の幅が元には戻らない点を理解したうえで、施術を受けるかどうかを慎重に検討してください。
術後1週間はなるべく安静にする必要がある
フェノール法の施術後、基本的には普段通りの生活ができますが、1週間程度はなるべく安静にする必要があります。細菌の感染を防止するために、当日の入浴は避けましょう。また運動は1週間程度、タバコや飲酒は2日程度控えるのが無難です。(医師によって、考え方には違いがあります。原則として執刀医の指示にしたがって下さい。)
再発の可能性がゼロではない
フェノール法の施術で切除した部分の爪は生えてこなくなりますが、残った爪が長期間をかけて変形すると、再び巻き爪・陥入爪を起こす可能性もゼロではありません。切除する範囲を広くしすぎると見た目に違和感が生じるので、切除範囲は慎重に決定しましょう。またフェノールの処理が適切にできたいないと、処理した部分から小さい爪が生えてくる可能性もあります。
フェノール法はどんな人に向いている?
フェノール法は、以下のような方に向いています。
- 化膿や炎症が生じており、保存的治療では修復が見られなかった巻き爪
- 症状が悪化して矯正治療が行えない陥入爪
- 爪の幅が狭くなってもかまわないので、なるべく早く巻き爪を治したい方
反対に、以下のような方にフェノール法はおすすめできません。慎重に適応を判断する必要があります。
- 巻き込みの激しい巻き爪(爪の幅が極端に狭くなっても良いのであれば可能)
- 爪の幅が狭すぎる方
- 末梢循環障害のある方
- 狭心症、高血圧症の方 など
フェノール法による治療の流れ
フェノール法をはじめとする巻き爪・陥入爪の手術は、主に形成外科で受けられます。フェノール法は、一般的に次のような流れで行います。
- ブロック麻酔をする
- 切除する爪の部分を周りからはがす
- 食い込んだ部分にハサミで割れ目を入れる
- 爪の食い込んだ部分を抜き取る
- フェノール剤で患部の根元にある爪母組織を処理する
- 切除部分を洗浄し、保護処理をして完了
フェノール法による治療の流れについて、画像付きで解説した以下の記事もご覧ください。
フェノール法による治療費の目安
フェノール法の施術は、健康保険が適用されます。投薬や通院を含めたとしても、3割負担であれば通常1足指あたり1万円以内に収まるでしょう。
手術は高額であるというイメージを抱かれがちですが、巻き爪・陥入爪に関してはむしろ自由診療となる矯正治療よりも安く済むケースが多いです。また加入している医療保険や生命保険のないようによっては、日帰り手術の給付対象になる可能性もあります。
フェノール法を含めた手術治療以外が適しているケースも!
巻き爪・陥入爪の症状次第では、フェノール法ではなく他の治療法が適しているケースもあります。自身の症状にどのような治療が適しているかは、担当医師によく相談しましょう。ここからは、手術によらない保存的治療について解説します。
矯正治療
巻き爪・陥入爪の症状が軽度である場合は、保存的治療のひとつである矯正治療を行う病院が多いです。矯正治療には、以下のようなタイプがあります。
- クリップを用いた矯正治療(クリップ法)
- プレートを用いた矯正治療
- ワイヤーを用いた矯正治療(ワイヤー法)
上記のように、クリップやプレート、ワイヤーなどを使って、変形した爪を元に戻していきます。
矯正治療については、以下の記事で詳しく解説しています。
ガター法
ガター法とは、皮膚と爪の隙間にチューブを差し込み、爪が食い込んでいた部分の皮膚を保護するやり方です。短く切りすぎた深爪に対して、チューブの保護によって本来の向きに伸ばす治療法です。
チューブを装着する際には痛みが生じやすいので、施術前に局所麻酔をするのがおすすめです。そのためガター法は、セルフケアではなく医療機関で受けてください。
爪の部分切除
巻き爪・陥入爪の治療法として、皮膚に食い込んだ部分の爪を部分的に切除する方法もあります。爪の部分切除は、もともと爪が薄い方や、爪の変形が軽度である方におすすめです。反対にひどく変形してしまっている場合は、部分的な切除では根本的な解決にならないので注意しましょう。
また、爪の部分切除を無理やり自分で行おうとするのはおすすめできません。爪と皮膚の間に傷ができると、そこから細菌が増殖して症状が悪化するリスクがあるからです。巻き爪・陥入爪になっている爪周りは非常にデリケートになっているので、むやみに触らず医療機関で治療を受けましょう。
巻き爪に対応してくれる医療機関を探すのが難しい場合があります。病院の探し方について解説した記事も参考にして下さい。
簗医師の解説記事:https://medical-media.jp/column/when-it-becomes-an-ingrown-nail/
まとめ
今回は、巻き爪・陥入爪を治療する手術療法のひとつ「フェノール法」について解説しました。フェノール法は痛みが少なく、日帰りで行える施術として注目を集めています。医師としっかり相談しながら、フェノール法を受けるかどうか検討してみてください。
なお巻き爪の症状が軽い場合は、巻き爪矯正器具である「ネイル・エイド」を使ったセルフケアで様子を見るのもおすすめです。ネイル・エイドは矯正力が高く、初心者の方でも扱いやすい仕様です。初期段階で巻き爪を改善させるためにも、ぜひネイル・エイドを試してみてください。
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【監修 埼玉医科大学 形成外科 簗由一郎医師】