なぜ糖尿病で巻き爪になる?初期症状とケア方法&治療法について
目次
なぜ糖尿病の人の巻き爪が悪化してしまうのでしょうか。
一見、血糖値と爪の異常は無関係のように思えますが、実は糖尿病と巻き爪は深い関係があります。
糖尿病の合併症から巻き爪を悪化させてしまう理由とは?
糖尿病で出やすい足の症状とは?
毎日の足のケアで必要なこととは?
巻き爪の治療法とは?
糖尿病と巻き爪の関係について、まとめました。
専門医のワンポイントコメント
一般的に「巻き爪」と「陥入爪」という言葉は混同して使われている場合がありますが、「巻き爪」と「陥入爪」は別の状態を表します。 この記事ではわかりやすいように一部「陥入爪」を含めて「巻き爪」という言葉で表現している場合があります。違いについての詳細は解説記事を参照してください。
簗医師の解説記事 https://medical-media.jp/basic/#s5 |
糖尿病の三大合併症とは
糖尿病とは、インスリンが十分に働かずに、常に血糖値が高くなってしまう病気です。
血糖値が高い状態が継続すると、合併症のリスクが増加したり、全身の不調の原因となります。
糖尿病の三大合併症と呼ばれる症状があります。
- 糖尿病網膜症
- 糖尿病性腎症
- 糖尿病性神経障害
糖尿病網膜症とは目の網膜に起こる障害で、悪化すると失明の危険もあります。
糖尿病性腎症とは腎臓の内部が障害を起こし、悪化すると血液透析が必要になる場合もあります。
糖尿病性神経障害とは、全身の神経に障害が起こる糖尿病の合併症です。
糖尿病の人は足の先などの末端の血管が狭く詰まりやすくなり、酸素や血液が気渡りにくくなります。
循環機能や栄養状態が悪くなりやすく、傷を治す力が弱くなったります。
糖尿病の神経障害は、手よりも足に症状が出やすいとされています。
糖尿病の足に出る初期症状
糖尿病による神経障害や血流障害の影響として、足にこのような症状がでる場合があります。
- 巻き爪の悪化
- 爪肥厚(そうひこう)
- 爪の変色
- タコ・魚の目
- 足が変形する
専門医のワンポイントコメント
以下の記事で巻き爪の原因と予防について詳しく解説しています。巻き爪の悪化が心配な方は是非参考にして下さい。 |
巻き爪
巻き爪とは、爪が丸く巻き込むような形状になってしまうことで、悪化すると皮膚に食い込んで痛みが出たり、炎症が起きたりする場合もあります。
糖尿病による運動神経障害は下肢や足の筋力を低下させます。
歩行の異常やアーチ構造のバランスを崩し、様々な足の変形を引き起こします。
その結果、爪に適切な力が加わらず結果として爪が巻いてしまう原因となります。
また、感覚障害は、巻き爪が皮膚に食い込んでも痛みを感じにくいため、そのまま放置し発見が遅れる事により、巻き爪から陥入爪を引き起こし悪化させる原因となります。
さらに、自律神経障害が皮膚や爪の角化に影響していると言われています。
巻き爪の原因や悪化させてしまう要因として、合わない靴を履いて爪が圧迫される、爪を切りすぎて深爪になってしまう、足の指に力を入れずに歩く、などがあります。
糖尿病の方は、爪を正しく切る、清潔に保つ、正しい姿勢で歩く、といった意識で巻き爪を予防することがより重要になります。
爪肥厚(そうひこう)
爪肥厚とは、爪が分厚くなった状態です。
爪肥厚になると、爪が割れやすくなる、割れやすい、剝がれやすくなり、化膿してしまうなどのケースがあります。
糖尿病の人は免疫力も低下しているので、爪白癬(つめはくせん/水虫のこと)への注意も必要です。
爪が変色する
糖尿病の人の爪に白い縦の線が入ったり、白く濁ったりすることがあります。末端への栄
養が足りていない事や、爪白癬などが原因と考えられます。
糖尿病でなくても、加齢や爪の乾燥が原因で爪に白い線が入るケースもあります。
過度に心配する必要はありませんが、爪の変色は糖尿病の初期症状の可能性もあると少し頭に入れておいても良いでしょう。
タコ・魚の目
タコや魚の目ができるのは、サイズの合わない靴などの圧迫や摩擦といった刺激に対する防御反応です。
真皮を圧迫して神経を刺激するので、強い痛みを感じるはずですが、糖尿病により神経障害がある人の場合は痛みを感じにくくなります。
そのためタコや魚の目に気付かず、皮膚の状態が悪化して傷口から感染してしまうというケースもあります。
足が変形する
爪の段差や変形、足の指が曲がったり、足裏にゆがみが出るというのも、糖尿病の症状のひとつです。
足の小さな筋肉や腱が弱ってしまうと、サイズの合わない靴を履く、爪を切りすぎてしまう、立ち姿勢が悪い、といった日常的なちょっとした原因で、傷ができるリスクになります。
糖尿病の人の足爪のケア
糖尿病の人は、足の爪には人一倍注意が必要になるでしょう。
とはいうものの、日常的にどんな点に気を付ければいいのでしょうか。
足爪の変化を早く見つける、悪化させないためには、以下のようなケアをしていきましょう。
- 毎日足を観察する
- 抵抗力を保つため清潔にする
- 爪を正しく切る
- 靴下を履く
- 靴は足にやさしいものを
- ヤケドに注意する
- 足に正しく体重をかける
毎日足を観察する
足を観察する習慣をつけましょう。
というのも、糖尿病の合併症は神経障害だけではなく、「糖尿病網膜症」もありましたので、視力が下がっている可能性もあります。
神経障害により痛みを感じにくくなっている、網膜症により視力が下がっている、という場合には、より注意して足を観察しなくてはいけません。
- 足全体だけでなく、足裏に傷はないか
- 色は正常か
- 巻き爪になっていないか
- 爪の色や厚さは正常か
- タコや魚の目はないか
まずは足や爪の変化に気付けるようにしておくのが、大切です。
抵抗力を保つため清潔にする
糖尿病による血流障害や神経障害は体の抵抗力を弱め、感染を引き起こしやすくします。
足の指の間や裏も、柔らかいスポンジで丁寧に洗ってあげてください。
巻き爪があると角質がたまりやすく傷みの原因となりますので、細かい部分まで洗うようにしましょう。
皮膚は保湿クリームで保湿して、爪はネイルオイルで保湿しておくとよいでしょう。
神経障害があると温度も感じにくくなっていますので、湯舟につかる際には手で温度を確かめるようにしましょう。
爪を正しく切る
深爪を続けていると巻き爪の原因になりますし、長すぎる爪も先から巻き始めてしまいます。
そのため適切な長さに爪を切るというのが、巻き爪予防に重要となります。
巻き爪の場合はスクエアオフという四角い形に、爪をカットします。
丸い曲線の爪にならないよう、直線刃をもった巻き爪用の爪切りを使用するのもおすすめです。
神経障害が進行していると、爪が割れたり巻き爪が食い込んでも違和感を感じなくなってしまいますので、常に適切に処置しておきましょう。
専門医のワンポイントコメント
爪の切り方が悪く、感染を悪化させてしまう糖尿病患者さんを診察することも多いです。 爪の正しい切り方をイラスト入りで解説しています。参考にして下さい。 |
靴下を履く
素足でいると怪我をしてしまうかもしれませんので、足を守るために靴下を履くようにしましょう。
蒸れると水虫の心配もありますので、通気性のよいウールか綿の靴下を探しましょう。
足を締め付けない履き心地のよいもので、サイズの合ったものを選びます。
万が一、出血した際にも見た目で気付きやすくするために、白い色だとよいです。
雨で濡れたりした際にはすぐに履き替えるなど、清潔な状態を保てるように心がけましょう。
靴は足にやさしいものを
靴が足に合っていないと、締め付けられて圧迫したり、靴ずれを起こしたりします。
つま先が締め付けられないタイプを選び、ハイヒールのように体重の負荷が偏る靴は避けましょう。
1日の中では、朝よりも夕方の方が足が大きくなりますので、夕方に靴を選ぶのがおすすめです。
靴を履く前には、怪我防止のために小石などの異物が入っていないか確認して履くようクセ付けておくようにしましょう。
ヤケドに注意する
神経障害により足の冷えを感じている方もいるかもしれませんが、足は熱さに対しても鈍感になっているのを忘れないようにしましょう。
こたつや靴用カイロ、電気カーペットなどは低温ヤケドの注意が必要ですし、直射日光での日焼け、真夏の砂浜を素足で歩くのも危険です。
抵抗力が低くなっているので、ちょっとしたヤケドから感染したり、症状が悪化したりするリスクもあります。
足に正しく体重をかける
巻き爪になる理由のひとつとして、歩き方に問題がある場合もあります。
通常はかかとで着地して、重心を移動させ、つま先で地面を蹴って前に進みます。
足の指にしっかりと力がかかるのが重要で、かかと重心になっていたり、靴の中で「浮き指」の状態になっていると、足の指に力が入らずに巻き爪になっていってしまいます。
歩き方はクセになっているので、すぐに改善させるのは難しいかもしれませんが、意識を変えるところから始めてみましょう。
専門医のワンポイントコメント
巻き爪の要因は、歩き方や靴の選び方が大切だと考えています。以下の記事で詳しく解説しています。 |
糖尿病の人の巻き爪治療法
巻き爪を放っておくと、「陥入爪(かんにゅうそう)」といって皮膚に食い込んで周囲の皮膚に炎症を起こしてしまったり、歩行困難、最悪の場合では足の切断を迫られたりするケースもあります。
巻き爪に気付いたら、早めに治療をしなくてはいけません。
巻き爪の治療法は、大きく分けて主に以下の3つになります。
- 保存治療
- 矯正治療
- 手術治療
巻き爪の進行具合や症状によって、医師との話合いで治療法を決定させていきます。
保存治療
巻き爪の保存治療とは、テーピングを用いた方法や抗生剤の内服などを行います。
自宅でセルフケアとしてできる方法もありますので、軽度の方は自宅でも取り組んでみてはいかがでしょうか。
痛みもすくなく、リーズナブルにできる方法もあります。
テーピング法
テーピング法とは、テーピングを巻いて、爪郭部の皮膚を引き下げて痛みを緩和させる方法です。
らせん状にテーピングを巻きつけて、陥入改善させていきます。
巻き爪そのものの治療とはいいにくいかもしれませんが、テーピングだけでできるので手軽に痛みを緩和させられる方法です。
テーピングの巻き方は複数ありますので、専門医に相談するといいでしょう。
コットンパッキング法
メイクに使用するコットンを使って、巻き爪を改善させる方法がコットンパッキング法です。
爪が巻き込んでしまっている部分にコットンを詰めて、爪の形を改善させていきます。
爪の端を持ち上げるようなイメージで、最初は少量のコットンからスタートさせましょう。
テーピングを巻いて、コットンがずれないように固定するやり方もあります。
爪甲部分(爪棘)切除法
爪甲部分(爪棘)切除法とは、巻き爪によって食い込んでしまった爪の角を切除する治療法です。
巻き爪の形を改善させる方法ではありませんが、痛みを和らげられる方法といえます。
ガーター法
ガーター法とは、爪と皮膚の接触を避けるために、アクリルのチューブを被せて爪を保護する治療法です。
チューブは接着剤や縫合糸で固定します。
自宅ではできず、麻酔が必要な処置となりますが、処置後は普段通りの生活ができます。
矯正治療
ワイヤーなどを使って巻き爪の矯正をする治療法です。
「弾性ワイヤー法」「3TO-VHO法」など、手法は複数あります。
数ヶ月の時間をかけて、徐々に爪の形を変形させていきます。
何度か通院する必要がありますし、1年ほど時間がかかる場合もあります。
手術治療
矯正治療をしても再発を繰り返す、炎症を起こして化膿してしまっているようなケースでは、外科的な手術が必要になる場合もあります。
「フェノール法」「爪縁切除」など、巻き爪の進行具合と症状によって手術の内容は変化します。
手術後は再発や合併症がないかも含めて、半年以上の経過観察が必要となります。
糖尿病は血糖値のコントロールが重要
糖尿病といわれたら、まずは血糖値のコントロールをするのが重要です。
糖尿病網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害といった三大合併症にならないためにも、日々の生活習慣の見直しから取り組んでいきましょう。
- 健康的な食事と運動
- ストレスもコントロールする
- 禁煙・禁酒する
健康的な食事と運動
食事や運動の見直しは、基本中の基本なので病院でも指摘されているでしょう。
絶対に食べてはいけない食材があるわけではありませんが、血糖値が急上昇しないような食べ方には注意が必要です。
軽い運動をするだけでも食後血糖は下がりやすくなりますので、できる範囲の運動でいいので始めてください。
ストレスもコントロールする
ストレスと血糖値も関係があるといわれていて、ストレスを感じると血糖値が上昇するとわかっています。
食事の制限があったり、嫌いな運動をさせられたりして、強いストレスを感じるようであれば糖尿病の自己管理ができていないかもしれません。
今まで食事でストレスを発散していた人は、別のストレス発散方法を見つけなくてはいけません。
ヨガやストレッチなど、運動でストレス発散できるような趣味が見つかるとベストです。
禁煙・禁酒する
糖尿病の人がタバコを吸うと、動脈硬化や網膜症、神経障害や足病変といった合併症のリスクが高まります。
お酒を飲みすぎると血糖値のコントロールが難しくなりますので、適量を守りましょう。
お酒は適量であれば許容されるかもしれませんが、喫煙は絶対にやめましょう。
糖尿病と巻き爪は深い関係がある
糖尿病の合併症には神経障害があり、巻き爪は深い関係があるとわかりました。
神経障害がおこると、足の痛みや熱さなどに鈍感になり、異変が起きていても気づきにくくなります。
起こりうる足の異変としては、巻き爪、爪肥厚、タコや魚の目、足の変形などがあります。
巻き爪になってしまうと手術が必要な場合もありますので、悪化する前に病院で治療を開始してください。
糖尿病の方はまずは血糖値のコントロールをするのが重要です。
食生活などの生活習慣を見直して、自分の体を大切に日々を過ごしていきましょう。
また、初期の巻き爪であれば「ネイル・エイド」で改善する可能性があります。簡単に使えるアイテムなので、ぜひネイル・エイドを試してみてください。
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【監修 埼玉医科大学 形成外科 簗由一郎医師】