陥入爪手術は痛い?簡単なものは麻酔なしって本当?注意点を解説
目次
「陥入爪のせいで痛みが強いから手術を検討しているけど、どのくらい痛いんだろう」と、陥入爪手術に不安を抱えている人もいるでしょう。
手術というと、痛みが強かったり、入院しなければいけなかったりするイメージがありますよね。
この記事では陥入爪手術の痛みや手術の方法などを解説しているので、「手術を受けるかどうか悩んでいる」という人は、この記事を参考に治療を検討してください。
- 陥入爪の手術の種類
- 陥入爪手術のメリット・デメリット
- 陥入爪手術の痛み
- 陥入爪手術の費用
- 陥入爪手術を受ける際の注意点
この記事の監修をお願いしている簗医師の、解説記事へのリンクを文中に掲載しています。より詳しく知りたい方は、簗医師の解説記事もご覧ください。不明な点は掲示板(https://medical-media.jp/bbs/)からご相談ください
専門医のワンポイントコメント
一般的に「巻き爪」と「陥入爪」という言葉は混同して使われている場合がありますが、「巻き爪」と「陥入爪」は別の状態を表します。 この記事ではわかりやすいように一部「陥入爪」を含めて「巻き爪」という言葉で表現している場合があります。違いについての詳細は解説記事を参照してください。
簗医師の解説記事 https://medical-media.jp/basic/#s5 |
陥入爪の手術はどんなことをする?
陥入爪手術は症状や担当する医師によって、手術の手法はさまざまです。
手術方法ごとにメリット・デメリットがあるため、まずは陥入爪手術の方法について解説します。
陥入爪手術の手法として代表的なものは以下4種類で、どの方法も医療行為のため病院でしか治療は受けられません。
- フェノール法
- NaOH法
- 鬼塚法・児島法
- 爪縁切除
フェノール法
フェノール法は炎症を伴う陥入爪に悩んでいる人に最適な手術方法で、保存療法や矯正治療では症状が改善しない症例に適応します。
皮膚に食い込んだ爪を除去したあと爪母にフェノールを塗布するため、新たな爪が生えてくることはありません。
ただし、末梢循環障害や高血圧症、狭心症のある人は、治療を受けられない可能性もあるため、医師に相談してみましょう。
手順
フェノール法は皮膚に食い込んだ爪を除去するために、出血や痛みをともないます。
そのため、基本的にブロック麻酔をしてから手術を行うため、痛みを感じることはありません。
術後は、翌日・1週間後・2週間後に医師による状態確認ののち治療終了となります。
- 部分麻酔を行う
- 手術か所にマーキングをする
- 皮膚に食い込んでいる爪を剥がしていく
- 食い込んでいる爪をハサミで切り、取り除く
- 取り除いた爪の根本にフェノールを塗布し爪母を焼灼する
- 洗浄後、薬剤を塗布し包帯圧迫をする
メリット
フェノール法最大のメリットは、炎症が起きているときも手術を実施できることです。
「爪が当たっていて痛みが強く、今すぐなんとかしたい」という場合でも安心して治療を受けられます。
また、縫合や抜糸の必要がないことや、術後の痛みが少なく安静が必要ないということもメリットといえるでしょう。
- 炎症が起きていても実施できる
- 従来の陥入爪手術に比べて痛みが少ない
- 再発の可能性が低い
- 縫合の必要がない
デメリット
フェノール法のデメリットは、持病によって手術を行えない可能性があることです。
末梢循環障害を持っている人や、十分なコントロールをできていない高血圧症や狭心症の人は別の治療方法を検討しましょう。
また、フェノール法は陥入爪の再発の少ない手術方法ですが、100%再発しないというわけではありません。
- 爪が細くなる
- 爪が変形する可能性がある
- 再発の可能性がある
- 持病によって実施できない場合がある
NaOH法
NaOH法は皮膚に刺さった爪を除去した後、爪母を水酸化ナトリウムで焼いて、原因となる爪が再生しないように処置する方法です。
フェノール法と同じく縫合が必要ないため、通院回数が少なくすみます。
術後は化膿を抑えるために、抗生物質が処方されることが多いです。
手順
NaOH法では、水酸化ナトリウムを用いて爪母を焼いてしまいます。
麻酔を使用して手術を行うため、痛みを感じることはないでしょう。
処置終了後は、NaOHを中和する処置を行い、洗浄・圧迫して手術終了です。
- 部分麻酔を行う
- 手術か所にマーキングをする
- 皮膚に食い込んでいる爪を剥がしていく
- 食い込んでいる爪をハサミで切り、取り除く
- 取り除いた爪の根本にNaOHを塗布し爪母を焼灼する
- NaOHを酢酸で中和する
- 洗浄後、薬剤を塗布し包帯圧迫をする
メリット
NaOH法とフェノール法の違いは使用する薬剤だけなので、NaOH法にはフェノール法同様のメリットがあります。
NaOH法も従来の術式と比べてスムーズに治療が終わり、痛みが少ないため、なかなか時間が取れないという人でも比較的容易に治療を受けられるでしょう。
また、しっかり爪母を処理すれば、再発の可能性が少ないこともメリットです。
- 炎症が起きていても実施できる
- 従来の陥入爪手術に比べて痛みが少ない
- 再発の可能性が低い
- 縫合の必要がない
デメリット
NaOH法は、実施している病院が少ないことがデメリットです。
薬剤に対するこだわりがなければ、フェノール法も視野に入れて病院探しをするといいでしょう。
また、爪母の処置が甘いと再発の可能性があるため、治療実績が豊富な病院を選ぶことも大切です。
- 爪が細くなる
- 爪が変形する可能性がある
- 再発の可能性がある
- 実施している病院が少ない
鬼塚法・児島法
鬼塚法は、爪母と一緒に爪床や骨膜、側骨間靱帯を除去する術式です。
児島法は鬼塚法を改良した治療方法で、側骨間靱帯を温存し爪母や爪床を除去することで、鬼塚法よりも痛みや身体への負担を軽減できます。
フェノール法の登場によって、鬼塚法や児島法は以前よりも実施されることが少なくなりました。
手順
鬼塚法と児島法の手術手順は以下の通りです。
ただし、切除範囲する範囲が異なり、鬼塚法は切除範囲が大きいため縫合が必須ですが、児島法は縫合が必要ない場合もあります。
- 部分麻酔を行う
- 手術する指の根本を止血する
- 皮膚に食い込んだ爪を除去する
- 問題となった爪の爪母と爪床をメスやハサミで切除する
- 縫合する
- 1週間~3週間後に抜糸を行う
メリット
鬼塚法や児島法は、フェノール法よりも治療期間が短い傾向にあります。
そのため、短期間で通院を終了したいという人におすすめです。
また、40年以上実施されている手術方法なので、安全性が確立しています。
- 治療期間が短い
- 再発の可能性が低い
- 治療実績が豊富
デメリット
鬼塚法や児島法は強い痛みをともなうため、両足を同時に施術してしまうと歩行が困難になることも予想されます。
鬼塚法や児島法で手術を受ける場合は、術後安静にできる時期に施術を受けましょう。
また、爪母の除去が十分ではない場合、再発する可能性も否定できません。
- 非常に強い痛みがある
- 爪が細くなる
- 再発する可能性がある
爪縁切除
爪縁切除は、皮膚に食い込んでいる爪のみを除去する方法です。
炎症や化膿が起きて痛みがある際に行うと、症状を急速に改善できます。
※手術ではなく処置に分類される場合もあります
圧迫している爪がなくなることで痛みが改善しますが、1度の治療で根治するのは難しいでしょう。
手順
爪縁切除は、問題となる爪のみを取り除くため、難しい処置ではありません。
前出の手術方法と比べて痛みが非常に少ないため、麻酔なしで行うことも多いです。
爪を除去する過程で、出血や痛みをともなうことがあります。
- 必要に応じて、除去する範囲をマーキングする
- 皮膚に食い込んだ爪のみをハサミや爪切りで除去する
- 出血があれば止血する
メリット
爪縁切除は、治療の痛みや出血がほかの治療方法を比べて非常に少ないため、痛みが不安な人におすすめな手術方法です。
陥入爪による痛みをすぐに改善できるため、陥入爪のせいで歩行が困難になっている場合や、初期の陥入爪の治療として実施されます。
麻酔なしで治療ができるので、注射が怖いという人も安心して治療を受けられるでしょう。
- 陥入爪による痛みをすぐに改善できる
- 出血や痛みが少ない
- 麻酔なしで治療を受けられる
デメリット
爪縁切除は、再発の可能性が高い治療方法です。
1度の処置だけでは十分な効果を得られないため、根気強く治療を続ける必要があります。
また、爪縁切除は痛みや出血の少ない手術方法ではありますが、痛みがまったくないわけではありません。
- 再発の可能性が高い
- 処置の際に出血や痛みをともなうことがある
- 繰り返し治療を繰り返さなくてはいけない
専門医のワンポイントコメント
いろいろな手術方法がありますが、私はフェノール法をお勧めしています。以前は鬼塚法や児島法を行っていましたが、最近は実施する機会が減っています。 |
陥入爪手術の痛みはどのくらい?
手術中はどの方法でも麻酔をするため痛みを感じることはありません。術後の痛みは、鬼塚法や児島法が最も強く、ついでフェノール法やNaOH法の順で痛みが少なくなっていきます。
爪縁切除は切除の範囲でフェノール法やNaOH法と痛みの程度が前後します。
ほとんどの手術で麻酔が使用されるため、施術中に痛みを感じることはないでしょう。術後痛みを感じるのは1日~2日程度で、鎮痛剤を使用することでほとんど痛みが気になりません。
手術の痛みが不安な人は矯正治療も検討してみて
陥入爪の手術の痛みが不安な人は、手術の必要がない矯正治療も検討してみてください。
矯正治療なら、その場で陥入爪による痛みを改善できます。
陥入爪の矯正治療を検討している人には、セルフケアができるネイル・エイドがおすすめです。
陥入爪手術の治療費用相場
陥入爪手術は、保険適用の治療方法です。
マチワイヤーやプレートを使った矯正は、トータル10万円かかることもありますが、陥入爪手術の場合1万円程度で収まるでしょう。
手術法による費用の違いは、以下の表を参考に比較してみてください。
手術方法 | フェノール法 | NaOH法 | 鬼塚法・児島法 | 爪縁切除 |
---|---|---|---|---|
費用相場(3割負担) | 7,500円 | 5,500円~7,500円 | 7,500円 | 2,000円 |
フェノール法
フェノール法の治療費用相場は、7,500円です。
術後は3回程度通院する必要がありますが、経過が順調であれば10,000円程度で治療が終了します。
施術か所に合併症が見られる場合は、さらに処置が必要となり費用が高くなるので、清潔を保つよう注意しましょう。
NaOH法
NaOH法の治療費用相場は、5,500円~7,500円程度です。
フェノール法同様、術後3回程度の通院が必要なので、トータルした費用は10,000円程度でしょう。
鬼塚法・児島法
鬼塚法や児島法の治療費用相場は、7,500円です。
鬼塚法や児島法は抜糸しなくてはいけないので、術後の通院を含め10,000円程度かかります。
爪縁切除
麻酔を必要としない爪縁切除は、2,000円程度で治療を受けられます。
ただし、陥入爪の状態や麻酔の有無によって必要な処置が異なるため、費用が心配な人は事前に受付で聞いておきましょう。
爪縁切除は複数回施術を受ける必要がありますが、前出3つと比べると費用はグッと抑えられます。
陥入爪手術を受ける際の注意点
陥入爪の手術を行うと、数日間生活の中で制限が生まれます。
そのため、「陥入爪の手術を受けようか迷っている」という人は、術後の注意点をしっかり把握した上で、治療を受けるかどうか検討することが大切です。
下記の注意事項を解説するので、これから陥入爪手術を受ける予定だという人は、内容を頭に入れておきましょう。
- 手術当日は入浴ができない
- 手術当日の飲酒は厳禁
- 手術後1週間程度は運動を避ける
- 陥入爪手術によって合併症が起きる可能性がある
- 陥入爪が再発する可能性がある
手術当日は入浴ができない
血流の循環がよくなると、手術した爪周辺の痛みが強くなるため、陥入爪手術当日は基本的に入浴ができません。
手術2日後から入浴可能ですが、身体が温まりすぎないよう短時間ですませる必要があります。
細菌感染の心配もあるため、手術当日はシャワーや入浴を避け、足をぬらさないようにしましょう。
手術当日の飲酒は厳禁
アルコールを摂取すると、血流の循環がよくなります。
そのため手術当時はもちろん、術後3日程度はアルコールの摂取を控えましょう。
また、患部を縫合している場合は、抜糸まで飲酒を控えることをおすすめします。
手術後1週間程度は運動を避ける
陥入爪の手術をしたら、1週間程度は運動を避けましょう。
激しい運動をすると、傷口が開いたり、刺激によって炎症が起きたりする可能性があります。
また、傷口が治るまでは長時間のウォーキングなども避けてください。
陥入爪手術によって合併症が起きる可能性がある
陥入爪手術を行うと、爪母の処置が原因で合併症が起きる可能性があります。
陥入爪手術によって起こる合併症は、以下の通りです。
- 軟部組織の膨隆変形
- 疼痛
- 爪の成長障害
- 爪棘
- 表皮嚢腫
これらの症状が見られたら、手術を行った病院に相談しましょう。
陥入爪が再発する可能性がある
爪母の処置が十分に行われていない場合、陥入爪が再発する可能性があります。
また、つま先の細い口やヒールの高い靴、間違った爪のケアも陥入が爪再発の原因です。
再発を繰り返す度に治療の難易度が高くなってしまうため、再発しないように気を付けましょう。
専門医のワンポイントコメント
術後に陥入爪が再発する原因は、(1)残った爪が巻き爪になり陥入する、(2)切除した爪母の処理が不十分で爪がまた生えてくる、の2つが主な原因です。(2)は適切な手術を受ければ心配しなくて大丈夫です。(1)に関しては術後の予防が重要となります。再発した場合は、爪の幅をさらに狭くするといった再手術も可能です。 |
陥入爪手術は入院の必要がないから仕事のある人でも安心!
陥入爪手術はほとんどの場合麻酔を使用して行うため、手術中に痛みを感じることがなく、手術後も鎮痛剤によって痛みを抑えられるので、痛みによって生活に支障をきたすことはありません。
陥入爪手術は入院の必要もなく、術後すぐに通常の生活を送れるため、「仕事が休めないから手術をするかどうか悩んでいる」という人でも、安心して治療を受けられます。
陥入爪は症状が悪化すると、痛みによる歩行困難などによってQOLが著しく低下してしまうため、早めの治療を心がけましょう。
【監修 埼玉医科大学 形成外科 簗由一郎医師】
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