爪が皮膚に食い込んでいる状態を陥入爪といい、陥入爪を放置していると化膿する恐れがあります。陥入爪が化膿した場合は、適切な応急処置をしたうえで病院を受診することが重要です。
今回の記事では、陥入爪による化膿の原因や対処法、病院での治療法などについてご紹介します。陥入爪の患部が化膿してお悩みの方は、ぜひ参考にしてみてください。
一般的に「陥入爪」と「巻き爪」という言葉は混同して使われている場合がありますが「陥入爪」と「巻き爪」は別の状態を表します。
この記事ではわかりやすいように一部「巻き爪」を含めて「陥入爪」という言葉で表現している場合があります。違いについての詳細は解説記事を参照してください。
- 陥入爪=爪甲が側爪郭に陥入し炎症を引き起こした状態
- 巻き爪=爪甲が彎曲した状態
簗医師の解説記事:https://medical-media.jp/basic/#s5
陥入爪による化膿の原因
陥入爪とは、皮膚に爪が刺さって爪の周囲に炎症を起こしている状態のことです。爪が食い込んだ皮膚に傷ができて、その部分から細菌が侵入すると、化膿が生じる恐れがあります。単に爪が巻き込んでいる巻き爪と異なり、陥入爪のほうが症状悪化を起こしやすいです。
陥入爪による化膿を放置するリスク
陥入爪による化膿を放っておくと、炎症や痛みが慢性化したり、範囲が拡大したりする可能性があります。何度も化膿を繰り返していくと、化膿性肉芽腫が生じ、さらに治りにくくなる恐れもあるのです。
また炎症の範囲が爪の周囲だけにとどまらず、身体全体に拡大する事態にもなりかねません。爪の痛みが強いと歩くのが辛くなるので、転倒や腰痛などの原因にもなります。糖尿病や透析中の方など基礎疾患のある方は特に注意が必要です。
【自宅での応急処置】陥入爪によって化膿している場合の対処法
陥入爪による化膿は、無理やり自分だけで出そうとしないでください。ここでは余分な膿を取り除いたり、痛みを緩和したりする応急処置の方法についてご紹介します。応急処置を行ったうえで、病院で適切な治療を受けてください。
コットンパッキング
コットンパッキングとは、コットンやガーゼを用いて皮膚を守るやり方です。
<準備するもの>
- コットンまたはガーゼ
<コットンパッキングのやり方>
- コットンやガーゼを米粒程度の大きさに丸める
- 化膿している部分の皮膚と爪の隙間に挟み込む
コットンパッキングでは、爪と皮膚の間にクッション部分を作ることで、食い込みによる痛みを和らげることができます。普段から使っているコットンやガーゼでできる方法なので、痛みを素早く緩和させたい方はぜひ試してみてください。
テーピング(絆創膏)
テーピングには、以下のように2とおりのやり方があります。テープがない場合は絆創膏でも代用できるので、自宅にあるアイテムでぜひ試してみてください。
<準備するもの>
- テープ(2.5×6cmの大きさが望ましい)または絆創膏
<テーピングのやり方その1>
- 爪が刺さった皮膚の端にテープの端をあわせる
- 皮膚と爪の間を広げるイメージでテープを引っ張る
- テープを下から上に回し固定する
テープで皮膚を引っ張ることで、皮膚と爪の間を生じさせて食い込みを和らげる方法です。テープを引っ張るときには、力を緩めないように気をつけましょう。
<テーピングのやり方その2>
- 爪の周りを包み込むようにアーチ状にテープを貼る
- テープの端(または絆創膏のコットン部分)が爪と皮膚の間に入るように押し込める
テープを皮膚と爪の隙間に入れ込むことで、食い込みによる痛みを和らげる方法です。爪の両端に化膿ができている場合は、反対側も同じように行いましょう。
以下の記事でテーピングの方法について動画で解説しています。参考にしてください。
【病院での治療】陥入爪によって化膿している場合の対処法
陥入爪によって化膿が生じている場合、上記でご紹介したセルフケアだけでは根本的な症状の改善にはなりません。皮膚科や形成外科、フットケア外来などの医療機関を受診して、適切な治療を受けましょう。
以下では、病院で受けられる陥入爪の治療法についてご紹介します。症状の重さによって治療法が異なるので、ぜひチェックしてみてください。
保存的治療
保存的治療とは、手術によらない治療法です。爪周りにできた痛みや炎症を和らげるため、次のような治療法を行います。陥入爪の原因が巻き爪である場合は、矯正による保存治療がよい適応となります。
- ガター法
- クリップを用いた矯正治療(クリップ法) ※
- ワイヤーを用いた矯正治療(ワイヤー法) ※
- プレートを用いた矯正治療 ※
※印は陥入爪の原因が巻き爪である場合の治療法
ワイヤーやプレート、クリップなどを使った矯正治療のほか、皮膚と爪の隙間にチューブを入れ込むガター法などがあります。このような保存的治療を受ける場合は、皮膚科やフットケア外来に行きましょう。
陥入爪の根本的な原因は、爪の皮膚に対する刺激です。それを取り除くことで陥入爪を治癒させます。
爪に直接的操作を加える爪甲部分(爪棘)切除法、周囲軟部組織や周囲軟部組織を爪から保護するガター法などが代表的な保存的治療になります。
簗医師の解説記事:https://medical-media.jp/treatment/
外科的治療
症状が重く保存的治療で症状が改善されない場合は、外科的治療を行うこともあります。外科的治療には、食い込んだ爪を部分的に切除して、陥入を改善させる方法と、根治的に爪の幅を狭くする手術治療があります。
外科的治療には、主に以下のようなものがあります。
- 爪甲部分切除
- 手術治療(フェノール法)
- 手術治療(NaOH法)
- 手術治療(メス・剪刀による爪母や爪床の切除)
爪甲部分切除は、軽度の食い込みの場合、麻酔を使用せずに処置することもあります。手術治療は食い込んだ部分の爪を根元から取り除き、爪が再度生えてこないように爪母を処理します。爪の幅が狭くなるので、根治的な治療法となります。陥入爪の外科的治療は、主に形成外科で受けられます。
巻き爪や陥入爪を適切に治療してくれる医療機関はまだまだ少ないと感じています。病院の探し方について記事で解説していますので、参考にしてください。
簗医師の解説記事:https://medical-media.jp/column/when-it-becomes-an-ingrown-nail/
陥入爪により化膿している場合、市販薬を使っても良い?
陥入爪により化膿している場合、痛みを緩和するための一時的な対処法として市販薬を使うのはおすすめです。ただし市販薬だけでは根本的な治療にならないため、必ず病院を受診しましょう。
内服薬
化膿止め(抗生物質)が配合された内服薬は、現時点で市販されていません。そのため化膿止めの内服薬を手に入れるためには、医師による診察および処方が必要です。なお陥入爪による痛みを緩和したい場合は、ロキソプロフェンナトリウムやイブプロフェンなどの成分が含まれた内服薬が比較的、除痛効果が高いです。
しかし痛み止めの薬だけでは、炎症の根本的な改善は期待できません。陥入爪を治すためには、医療機関を受診して適切な治療を受けましょう。
外用薬
陥入爪による炎症を緩和するためには、化膿止めを使うのがおすすめです。化膿止めとは抗生物質のことで、細菌の繁殖を防いだり細菌を死滅させたりすることが期待できます。化膿止めの内服薬は市販されていませんが、外用薬であれば展開されているので、薬局などでぜひチェックしてみてください。
まとめ
今回は、陥入爪による化膿の原因や対処法、病院での治療法などについてご紹介しました。陥入爪によって生じた化膿を放置していると、症状が悪化したり全身に波及したりする恐れがあります。応急処置によって痛みを和らげたうえで、病院を受診して適切な治療を受けましょう。
なお陥入爪の症状が軽度である場合は、市販の矯正器具を使用してセルフケアで様子を見るのもひとつの手です。「ネイル・エイド」は矯正力と耐久性に優れた矯正器具で、大きく変形した爪にも使用できます。初心者の方でも着脱可能で使いやすいので、陥入爪の原因が巻き爪の場合、症状を改善させたい方はぜひチェックしてみてください。
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【監修 埼玉医科大学 形成外科 簗由一郎医師】