陥入爪は皮膚科と整形外科どっちに行くべき?形成外科は?治療費用や内容を解説
目次
陥入爪に悩んでいる人の中には、「治療を受けたいけど、どの病院に行ったらいいのかわからない」と悩んでいる人が多いのではないでしょうか。
診療科目によって得意とする処置や症状が異なるため、病院を選ぶためには診療科目ごとの違いを知る必要があります。
この記事では、陥入爪の治療ができる診療科目や治療方法を紹介するので、治療の参考にしてください。
- 陥入爪が治療できる診療科目
- 陥入爪の治療方法
- 陥入爪の治療費相場
- 病院以外で陥入爪が治療できる場所
- 陥入爪を治療する際の注意点
専門医のワンポイントコメント
一般的に「巻き爪」と「陥入爪」という言葉は混同して使われている場合がありますが、「巻き爪」と「陥入爪」は別の状態を表します。 この記事ではわかりやすいように一部「陥入爪」を含めて「巻き爪」という言葉で表現している場合があります。違いについての詳細は解説記事を参照してください。
簗医師の解説記事 https://medical-media.jp/basic/#s5 |
陥入爪は何科で治療できる?病院を選ぶポイントは?
陥入爪の治療を受ける際に、皮膚科と整形外科どちらに行くか悩む人が多いです。
皮膚科も整形外科も陥入爪の治療を行うことはできますが、治療内容が大きく異なります。
陥入爪の治療ができる診療科目と、その治療内容や費用について解説していくので、自分に合った診療科を選ぶのに役立ててください。
陥入爪が治療できる診療科目
陥入爪の治療ができる診療科目は、主に以下の4つです。
それ以外の診療科でも治療を受けられる可能性はありますが、専門外の治療になるため、満足いく結果を得られない可能性があります。
それぞれの科でできる治療を紹介するので、自分の爪の状態に合わせて最適な病院を選びましょう。いずれの場合も受診前に電話で対応可能か確認してから受診をするとよいでしょう。
- 皮膚科
- 外科
- 形成外科
- 整形外科
専門医のワンポイントコメント
巻き爪をしっかりと対応してくれる医療機関は、まだまだ少ないと考えています。医療機関を探すのは難し部分もありますが、以下の記事で医療機関の探し方についてい解説しているので参考にしてください。 簗医師の解説記事 https://medical-media.jp/column/when-it-becomes-an-ingrown-nail/ |
皮膚科
陥入爪によって爪周囲の皮膚に炎症が起きたり、化膿していたりする場合は、皮膚科で患部を見てもらい、適切な処置をしてもらうのがおすすめです。
皮膚科では、陥入爪の保存的な治療も受けられますが、手術を希望する場合はほかの診療科目を検討する必要があります。
皮膚科では、一般的に、軟膏治療や簡単な外科処置、テーピングなどの保存的な治療を受けられます。また施設によっては保険外の矯正治療を取り入れているところもあります。
手術を採用している皮膚科もありますが、数は少ないので、手術を希望する場合はほかの診療科を検討する必要があります
外科(一般外科)
爪の爪母を切除するような手術が必要な場合は、外科でも対応が可能です。
ただし、外科は消化器系の疾患や乳腺、痔、鼠経ヘルニアなどの手術や治療を専門にしています。
陥入爪の治療は専門外として診察を行っていない場合もあるので、外科で治療を検討している場合は、事前に電話等で確認しておくといいでしょう。
形成外科
形成外科は保存的な治療はもちろん、外科的手術が必要な場合も治療を行えることが多いです。
そのため、爪母を切除するような手術を検討している人は形成外科を受診するのがおすすめです。
ただし、形成外科は皮膚疾患には対応していないことが多いので、爪水虫が心配な場合は皮膚科へも相談に行くといいでしょう。
整形外科
整形外科では、打撲や捻挫といった外傷、運動機能の問題について診療を行っています。
陥入爪の治療では、テーピング法や自費診療の矯正を受けられる場合が多いです。
また、陥入爪や巻き爪は足のアーチや足関節が原因となり発生していることがあるため、歩行や骨格について心配な人は、整形外科で相談してみるのがおすすめです。
陥入爪の治療方法
陥入爪の治療には、保険が適用される治療と、自費診療になる治療があります。
「できれば保険で治療をしたい」という人が多いかもしれませんが、近年では保険適用外の治療をおすすめされることも増えているようです。
どちらの治療方法にもメリット・デメリットがあるので、治療内容と一緒に紹介します。
保険診療
保険が適用される治療は、痛みの緩和を目指す保存的な治療方法と、問題となる部分を切除する積極的な治療が行われています。
保存的な治療方法は痛みを緩和する程度で、陥入爪が大幅に改善する可能性は低いでしょう。
しかし、爪の問題となる部分を切除するような積極的な治療は、痛みを伴うことが多いです。
- テーピング法
- コットンパッキング
- ガター法
- 人工爪
- 爪甲側縁楔状切除術
- フェノール法
- NaOH法
テーピング法
テーピング法は、爪の食い込みを改善して痛みを緩和する治療方法です。
爪が食い込んでいる皮膚にテーピングを張り、爪と皮膚に隙間ができるように引っ張りながら固定します。
簡単ですぐに痛みが改善できるため、最も採用されることの多い治療方法です。
コットンパッキング
コットンパッキングは、爪と皮膚の間にコットンを詰めて爪を浮かせる治療方法です。
コットンパッキングによって痛みが緩和され、次第に爪が矯正され皮膚に刺さらなくなります。
ただし、陥入爪の状態がひどい場合は、コットンを詰める際に痛みを感じるかもしれません。
ガター法
ガタ―法は、爪と皮膚の間にチューブを入れて、爪から皮膚を保護する治療方法です。
チューブによって爪が正しく伸びるため、変形の心配がありません。
ただし、チューブを皮膚と爪の間に入れるときに強い痛みがあるため、多くの場合は麻酔を使用して治療を行います。
人工爪
アクリル樹脂でできた人工爪を爪の先に装着することで、爪が皮膚に食い込むのを防ぎます。
2回~3回程度繰り返し治療を受ける必要がありますが、痛みを緩和するのと同時に爪の矯正が可能です。
そのため、治療終了後には陥入爪が改善されています。
爪甲側縁楔状切除術
爪甲側縁楔状切除術は、保存的な治療方法では改善しない陥入爪に行われる治療方法です。
皮膚に食い込む爪を切除することで、痛みや腫れが改善されます。
ただし、爪を取り除く際に痛みや出血が生じることもあるため、痛みが心配な人は事前に麻酔の使用は可能か確認しておきましょう。
フェノール法
フェノール法は、皮膚に食い込んだ爪を除去した後、フェノールを塗布する治療方法です。
フェノールを塗布することで、爪が生えてくるのを防ぎ、陥入爪の再発が防げます。
ただし、爪の幅が狭くなるため、審美性を重視する人はよく医師と相談してから治療を受けましょう。
NaOH法
NaOH法は、皮膚に食い込んだ爪を除去した後、NaOH(水酸化ナトリウム)を塗布する治療方法です。
NaOHを塗布することで、爪が生えてこなくなるため、陥入爪の再発が予防できます。
フェノール法同様、爪の幅が狭くなったり、処置が甘いと再度爪が生えてきてしまうことがデメリットです。
自費診療
陥入爪の自費診療は、主に矯正器具を使用した爪の矯正が行われます。
爪が正しく伸びるように矯正するため、痛みがなく、心身の負担が少ない治療法といえるでしょう。
ただし、自費診療なので保険診療と比べると高額な治療費がかかります。
- BSブレイス
- マチワイヤ
- VHO
BSブレイス
BSブレイスはドイツ式の爪矯正器具で、グラスファイバーでできたスプリング板を爪に装着することで、爪が正しく伸びるように補助します。
粘着力が弱まるため3週間~4週間に1回の張替えが必要ですが、継続して治療を行うと半年~9か月程度で効果を実感する人が多いです。
透明な素材でできているので、審美面で大きな影響を与えることがなく、BSブレイズを付けることで爪の食い込みが緩和されるため、痛みの軽減も期待できます。
マチワイヤ
マチワイヤは超弾性ワイヤーを爪に装着して、ワイヤーの力で爪の沈み込んだ部分を矯正します。
注射針などで爪に穴を空け、爪の強度に合わせたワイヤーを取り付ける必要があるため、陥入爪の治療実績が豊富な病院での治療がおすすめです。
陥入爪の治療実績の少ない病院で治療を行うと、爪が折れたり、早い段階でワイヤーが外れたりする可能性があります。
VHO
VHOはワイヤーを爪の両端にかけ、専用の巻き上げ機でワイヤーを巻き上げることで爪の沈み込みを矯正する方法です。
Virtuose Human Orthonyxie(熟練の技による人間的な巻き爪矯正法)の頭文字を取って名付けられた治療方法で、痛みや出血がなく爪を矯正できます。
爪が伸びるとワイヤーが爪の先へ移動するため、3か月に1回程度の付け替えが必要です。
陥入爪の治療費相場
陥入爪の治療費用の相場は、5,000円~12,000円程度です。
治療方法や治療する場所によってかかる費用は大きく異なります。
できるだけ治療費用を抑えたいという人は、治療前に陥入爪の保険診療ができるかどうか確認しておきましょう。
病院以外で陥入爪が治療できる場所
平成28年に行われた規制緩和によって、『爪の矯正は予防ケアに該当し、医療行為に当たらない』という見解が出されたため、病院以外でも陥入爪の施術が受けられるようになりました。
「病院の空いている時間に通院するのが難しい」、「爪で病院に行くことに抵抗がある」という人は、下記3か所で陥入爪の予防ケアを受けられる場所を探してみてください。
ただし、病院以外の場所での陥入爪治療は医療行為ができないため、炎症・化膿・出血・痛みに対する処置が行えないことは覚えておきましょう。
- 巻き爪治療院
- ネイルサロン
- 整骨院(接骨院)
- 自宅
巻き爪治療院
近年店舗数が増えている「巻き爪治療院」や「巻き爪矯正院」は、爪の矯正に特化した施設です。
矯正力の緩やかなプレートやワイヤーを使用した施術が主で、症状が軽度の陥入爪に対応しています。
ただし、重度陥入爪の場合はかえって症状が悪化する可能性もあるので、巻き爪治療院ではなく病院での治療を受けましょう。
ネイルサロン
ネイルサロンでは、厚みのある爪や皮膚に刺さっている爪を削ることで、陥入爪のケアができます。
すでにネイルサロンに通っているという人は、爪の悩みを相談してみるといいでしょう。
ただし、爪を削りすぎたり、誤った形に整えたりすると、陥入爪が悪化してしまうので注意が必要です。
整骨院(接骨院)
整骨院(接骨院)でも、自由診療として巻き爪や陥入爪の予防ケアを行っていることがあります。
整骨院(接骨院)での陥入爪に対する施術は、矯正力の緩やかな爪の矯正器具やテーピングを用いた施術が主です。
整骨院(接骨院)は医療機関ではありますが、医師が在籍していないため、医療行為を行えません。
自宅
「病院やサロンに通う時間がない」という場合は、セルフケアすることも検討してみてください。
巻き爪専用のケアアイテムはいろいろな形状が販売されていますが、その中でもおすすめなのがネイル・エイドです。
ネイル・エイドは、爪を削ったり、器具を加工したりする必要がないので、専門知識がなくても手軽に自宅でセルフケアできます。
陥入爪を治療する際の注意点
陥入爪の治療をする際は、爪の状態を見極め、最適な治療を選択する必要があります。
値段や通いやすさだけで病院やサロンを決めてしまうと、爪の状態が悪化したり、思ったような効果が得られなかったりする可能性があるので注意しましょう。
陥入爪の治療を行う際は、以下のポイントに気を付けて治療を受けてください。
- 陥入爪を放置すると肉芽や化膿のリスクが高まる
- 病院とサロンではできることが異なる
- 治療目的や患部の状態に合わせて病院を選ぶ
- 再発する可能性がある
陥入爪を放置すると肉芽や化膿のリスクが高まる
陥入爪を放置すると、爪が皮膚にダメージを与えることで肉芽や化膿のリスクが高まります。
薬剤の塗布や洗浄だけで症状が落ち着かない場合は、切開などの外科的処置を行わなくてはいけません。
炎症や化膿が起きてしまうと、爪の矯正が行えないため、そうなる前に治療を開始しましょう。
病院とサロンではできることが異なる
皮膚科や形成外科などの病院と、巻き爪サロンではできることが異なります。
後者は医師が在籍していないため、医療行為ができず、痛みや腫れに対する処置が行えません。
また、医学的知識を持っているとはいえないため、安全面や衛生面を考慮して、陥入爪の治療は病院で受けるのがおすすめです。
治療目的や患部の状態に合わせて病院を選ぶ
診療科目ごとに得意とする治療が異なるため、治療の目的によって病院を選ぶのもおすすめです。
たとえば、「水虫が原因で爪が弱くなり陥入爪になってしまった場合は、皮膚科で水虫を治しながら陥入爪の治療を受ける」、「痛みが強く、1秒でも早く陥入爪を治したいから、形成外科で爪母の切除を行う」など、希望にあった診療科目を選びましょう。
どの診療科目がいいのか悩んでいる人は、皮膚科に相談してみてください。
再発する可能性がある
陥入爪の治療によって、爪の状態がよくなっても、管理が悪いと再発してしまいます。
治療後に再発を防ぐためには、歩き方はもちろん、靴にも気を配りましょう。
つま先の細い靴やヒールの高い靴は、陥入爪や巻き爪の原因となるので避けるようにしてください、
陥入爪は自分で治さず病院に行くのがおすすめ
陥入爪は放っておくと、肉芽や化膿のリスクが高まるため、なるべく早い段階で治療をするのがおすすめです。
初期段階であれば自分でケアすることで改善することもありますが、正しい知識を持たずにケアを実践すると、返って逆効果になってしまう可能性もあります。
完璧に陥入爪を治したいと思っている人は、自分で治療せずに病院に行くのがおすすめです。
【監修 埼玉医科大学 形成外科 簗由一郎医師】
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